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八月のひと皿

きついカーブを何度も曲がりながら山道を登っていくと、突然目の前に山小屋のような作りのトラットリア(食堂)が現れる… カモニカ谷で暮らすようになって、そんなことがなんどもありました。店の前には車が何台もとまっています。食堂の扉を開くと、店内は、小さい入り口からは想像できないほど広く、素朴な木のベンチとどっしりしたテーブルが、常連さんたちも旅人も暖かく迎え入れてくれます。
そんな山深い食堂で出会ったひと品。ビゴーリ・アイ・フンギポルチーニ。ビゴーリというのは、うどんのような太いパスタです。お店の人が「手打ちです」と教えてくれました。フンギポルチーニというのは、ポルチーニ茸、イタリアのきのこです。

"Bigoli ai funghi porcini", Baita Dello Sciatore(Montecampione)にて

八月の終わりのカモニカ谷では「どこどこの山でポルチーニ茸を5キロ採った」とか、「今日は家族できのこ狩りに行くんだよ」などと、日常会話で良く聞かれるようになります。山の恵みをそのままいただくようなこの料理には、ソースにクリームもトマトもいらない。ポルチーニ茸そのもののうまみとオリーブオイルと手打ちパスタのゆで汁に、イタリアンパセリが加わって、味わい深い一品になります。素材の味が技によってひきたつ料理は本当に貴いですね。
技と言いましたが、きのこは下準備も大変です。ずっと前に買ったきり台所の引き出しにしまったままの、きのこについた土を落とす用ブラシをふと思い出しながら、山の恵みとその恵みを美味しく届けてくれる山の食堂に、ただただ感謝のひとときでした。

きのこブラシ。形もマッシュルームのようです。
これなら土落としも簡単そう、と思ったのですが、根気のいる作業です。

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