秋晴れ
蛸壺
入江を囲む堤防沿いの道に
蛸壺がたくさん積まれている
海の底で蛸を待っていた
黒い洞をこちらに向けて
今は何を待つでもなく
たまに鳥が降りて来たり
猫が中を覗き込んだり
素焼きの陶器だと思っていたら
蛸壺はプラスチック製だった
表面に小さな藤壺が
びっしり付いていた
秋晴れ
朝、玄関のドアを開けて空を見上げた。雲一つ無い青空だ。戸外に出て雲を探した。少なくとも空の北半分には一片の雲も無い。午前の仕事を終え、昼休みにホームセンターの駐車場で雲を探した。空の南半分にも雲が無い。帰ろうとした時、安売りの放送が始まった。ビオラとパンジーの苗を買って帰ろうか。振り向いたら、埠頭の遥か遠く、外海に浮かぶ小島の上に、ビオラのオレンジに似た色の雲がひと筋、うっすらと横たわっていた。
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