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こういう人いるよな。

今日も、アーシュラ・K・ル=グウィン『文体の舵をとれ』を読んで、文章の練習。

【赤の他人になりきる】
少なくとも二名の人物と何かしらの活動や出来事が関わってくるシーンを書く。
視点人物はひとり、出来事の関係者となる人物で、使うのは一人称・三人称限定視点のどちらでも可。登場人物の思考と感覚をその人物自身の言葉で読者に伝えること。
視点人物は(実在・架空問わず)、自分の好み出ない人物、意見の異なる人物、嫌悪する人物、自分のまったく異なる感覚の人物のいずれかであること。

*

「いちいち聞いてくんなよ」と彼女は思った。いや、思っただけでなく、実際に口にしていた。
周りの友達の「それな!」という返事で、ざわざわした気持ちがスカッとした。
割に正しくて、みんなの思ってることを的を射た言葉で言えている、そんな自負心が、彼女を気分良くさせる。
文化祭の準備でグループ分けをした時、彼女と同じグループにはなったものの、話の輪にも入れず、準備の役割分担の話し合いにも入れてもらえなかった底辺女が、30分のグズグズを経て、(恐らく)勇気を振り絞ってやってきたのだ。
「あの、私、何したらいいかな」
遠慮しいしい、不安そうに、目をキョドつかせて、もじもじと聞いてきた。「さあ? うちらもただ喋ってるだけだし。まだ待ってればいいんじゃん?」
そういうやり取りの後、底辺女はあからさまに肩を落として、また教室の隅の定位置にしゃがみこんで、じっとしている。
なんだあれ。
そう思ったから、「まあ、そろそろ始める?」と周りに声をかけた。
あちこちで、やる気があるようなないような声が上がって、準備に取り掛かる。もう役割分担は済んでいるから、みんな各々作業に散っていく。
慌てて立ち上がる底辺女が、なんとなく哀れを誘うけど、どっちかと言うと、鬱陶しさが勝って、不必要なハイテンションを装って「うちら、向こう行くね」と彼女は友達を引き連れて、教室を出た。底辺女が、グループリーダーの彼女がいなくなって、「私は何をどうしたら」みたいな感じでオタオタしているのが、なんだか笑える。
人気者はつらいね。
底辺はつらいね。
友達がいないなんて、つらいよね。
でも、そんなのは彼女のせいじゃない。底辺女自身のせいだ。自分の身の処し方を知らない方が悪い。
「みんな仲良く」なんてありえないんだし、だったらもっと計算高くなって、グループに所属するなり、上のランクを目指せるように、日々努力が必要なんだと思う。
ぼっちで、普段は一匹狼で強がっていても、グループ戦になれば必ず負ける。
彼女は意地悪でもなんでもなく、事実を述べているだけだ。
教室ですることがなくて、呆然とあほ面を晒す、一匹狼が笑えた。
「グループリーダー的に、あいつ置いてきてよかったの?」と、一人が聞いた。
「知らなーい。私、リーダーなりたくてなったわけじゃないし」
「くじ引きだったしね」
「そうそう。自分で、何とかするんじゃないの? いつもみたく」
「まあね」
聞いてきた友達も、けたけたと愉快そうに笑った。
「それに、なんで私にどうしたらいいのって聞くわけって話よ」
「確かに」
「グループリーダーだから、一応話は聞くけど、決めてあげなきゃいけない義務はないでしょって」
笑いが連鎖的に起こって、場に笑いがはじける。
爽快だ。
彼女は自分が正しい反応ができたこと、正しい発言ができて、周りを納得させられたことが嬉しかった。
こういうのを、青春と呼ぶんだろうなと、彼女は周りの笑いに包まれながら思う。
人生をガチャでいうなら、あの底辺女は、青春ガチャ失敗。何が悪いか、そんなの彼女だって知らないし、わからないし、興味もない。とりあえず、自分の身は自分で守る。
底辺女は今頃教室でどうしているだろうか。「ざんねーん」と彼女は思っておいてあげることにする。
誰も困ってない。困っているのは、あんただけ。普段一匹狼ぶって、群れるのをバカにして失敗した、あんただけ。
それが、腹がよじれるほどおかしい。

*

こういう人いるよな。と思いながら書いた。でも、私はこういう人になったことがないから、良くも悪くも論理がいまいち分からない。課題に沿えたのか、不安。

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