「え〜っ、今日、月曜日やと思ってた〜」。
スーパーのレジで、叫び声に近い音量が響く。
悩んだ挙句、その女性は支払いを済ませた。
溢れそうな買い物カゴを、荷物をまとめる
テーブルまで勢いよく移動させ、再びその
場で立ち止まる。
ゴールを外したプロサッカー選手のように、
頭を抱え、再びブツブツと言葉を発する。
「え〜、なんでなんで?、今日月曜日ちゃう
ん?今日月曜日やと思って、いっぱい買った
のに、月曜日じゃなかったら、10%割引の日
じゃないやん、あ〜、もう何で?。引くに引
かれへんやんっ。あ〜、も〜、なんで?・・」。
瞳を閉じ、少し上を見上げて、ゆっくり深呼吸。
しかし、
「あ〜っ、も〜、なんでなんで?。今日月曜日
やと思ってた、なんで月曜日ちゃうの?えっ、
なんでなんで?ん〜、もうムリッ、あ〜も〜」。
先に買い物を済ませ、エコバックに荷物を詰め
ていた私は、彼女を見守るしかなかった。
ふと思った。
「日曜日を、他の曜日と間違える人、
あんまりいてないような気がする・・・」。
自分の曜日間違いを思い出してみた。
「え〜、昨日祝日やったから、今日は
日曜日みたいな感覚で、休みモード
やわ〜 」とか。どちらかというと、
他の曜日を日曜日と間違えることはある
と思う。
日曜日は間違えられやすい、人気者の立場だ。
カレンダーでも赤で記されている程の、一目
置かれる存在だ。
今日が日曜日であるという事実を、残念がる人は
少ないと思うのだが。
「オモシロイ」。
人って、なんでこんなに捉え方が細かく違ってい
るのだろう。
「カワリモノ」「キモチワルイ」
では済ませたくない。
なぜか、惹きつけられてしまう自分がいる。
割引が効かなくて、悔やむ気持ちは理解できる。
人前で、声を出して悔やむことも、自分には出来
ないが、気持ちは理解できる。
だが、日曜日を月曜日と間違える感覚は理解で
きない。
知りたくなる。違いを楽しみたくなる。
「日曜日を月曜日と間違える女」。
さすがに声をかけるわけにはいかない。
私の楽しみは、ここで終わってしまう。
常識(?)が私を狭い思考の枠に閉じ
込めるのだろう。
こんな時に、「私に妄想力があればな〜」
なんて思う。
この続きを楽しめるというのは、
人より何倍も笑える人生なんだろうなと思う。
飛びたい。飛んでみたい。
「あ〜、も〜、なんで妄想できなの〜、
え〜、もう、なんでなんで〜?・・・」。
まるで私は、彼女に、
「こんな私を、楽しめないのかいっ?」
とメッセージを投げかけられた気分になった。
飛べない私。
いつか、あなたに寄り添ってみたい。