耽美主義文学の入口「ナイチンゲールとばら」~オスカー・ワイルド(改訂、ネタバレ有)
オスカー・ワイルドは、「耽美派」の筆頭として挙げられる作家です。
耽美(唯美)主義とは、19世紀後半に西洋で発達した芸術思潮の一つで、その時代の主流であった写実主義に反して「美しさ」に最高の価値を置くものです。
それは「美に耽(ふけ)る」の文字通り、常識にとらわれず美しさをとことん追求する姿勢ですので、一線を超えて非道徳的になったり残酷になることが多く、そこが魅力でもあります。
その特徴が顕著な「サロメ」などで知られるワイルドですが、「幸福な王子」(1888)をはじめとする童話集も残しています。
その中に収められた「ナイチンゲールとばら」は、ワイルドの美学が濃縮された、悲しくロマンチックな作品です。
この物語では「美しいものとそれに反するもの」、さらには、単なる「きれい(prettiness)」と「美(beauty)」の決定的な違いが鮮やかに描き出されています。ですので、ワイルド文学の本質に触れる上で分かりやすい作品と言えます。
また、「ドリアン・グレイの肖像」(1890)などでも言えることですが、表向きのスキャンダラスなイメージとは異なり、彼が実は真の「道徳」と、とことん真摯に向き合った作家だったことが垣間見られる掌編でもあります。
オスカー・ワイルド(1854-1900~アイルランド・詩人、作家、劇作家)
ヴィクトリア朝時代を代表するイギリス作家の一人。
耽美的・退廃的だった19世紀末を体現した彼の作品や生き方は、日本を含め世界中の作家たちに影響を与えた
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