
共通テスト 数学IA 「データの分析」の勉強法──直前期に力を入れるべき単元
こんにちは、Uraと申します。
予備校講師やプロ家庭教師として、小中高生を第一志望合格に導くべく活動している者です。
本記事の投稿日は12月下旬。本年度の共通テストまであと一ヶ月を切っているという時期です。
受験生の方、ここからの一日一日は「今日も限界まで頑張った」と言えるような毎日をぜひお過ごしください。ペース配分を考えて余力を残す必要は一切ないです。十分な睡眠時間と食事だけはしっかり確保し、あとの時間はすべて勉強に燃やしてください。
さて、本記事は共通テスト数学IAの「データの分析」の対策について綴るものです。
共通テストまで残り一ヶ月を切っていることを考えると、ここからの学習で強く意識するべきは"タイパ"です。
正直に言って、残り期間で現実的には伸ばし切るのが難しい科目や単元があります。しかし、逆に、短期間でも伸ばすことが可能なものも存在します。
「データの分析」はその筆頭です。共通テスト数学IAの単元の中で最もタイパがよいと私は思っています。
共通テストまでの残り少ない時間でどのように勉強していくべきか、詳しくお伝えしていきます。共通テスト数学IAの点数を本番までに伸ばしたい方、ぜひ本記事を参考に「データの分析」に力をいれてみてください。
■まず初めに注意点
2025年度の共通テスト(2025年1月18日、19日 実施)は新課程の入試にちょうど切り替わるタイミングの試験です。
旧課程と新課程でほぼ何も変わらない科目や単元もあるのですが、数学IAの「データの分析」はその切り替わりの影響を多分に受けます。それに伴い、高3生と浪人生とで対策の仕方が異なってくることにご注意ください。
高3生の方は以下の3章をお読みください。
■全受験生に向けて
■高3生のあなたに向けて
■高3生用 まとめ
浪人生の方は以下の3章をお読みください。
■全受験生に向けて
■浪人生のあなたに向けて
■浪人生用 まとめ
■全受験生に向けて
◎最低限身につけておきたい知識
次の(1)〜(3)に対してYESと答えられるかどうか、確認してみてください。
(1)データが具体的に与えられて、次の値をスラスラと求めることができるか
平均値、中央値、最頻値、四分位数(第1四分位数、第2四分位数、第3四分位数)、四分位範囲、四分位偏差、分散(二通りのやり方で)、標準偏差、共分散、相関係数
(2)箱ひげ図から読み取れることをすべて挙げられるか
(3)散布図を見て、おおよその相関係数を言えるか。逆に、相関係数が与えられたとき、散布図をおおよそイメージできるか
以上の内容に不安を覚えた方はお手持ちの参考書などで確認してみてください。
◎演習材料(1)共通テストの過去問
上記最低限の知識が確認できているようでしたら、もう過去問をぶん回していきましょう。
「過去問ばかりやっても点数は上がらない」という意見を耳にしたことがあるかもしれません。その意見自体は私も賛同するところですが、共通テスト数学IA「データの分析」に関しては過去問ばかりやるのが手っ取り早いです。
最低限の知識さえ抑えておけば戦える状態にはなりますので、あとは共通テスト独特の傾向に慣れていくのが効率的です。過去問を問題集のように使い、何周もしていきましょう。
最低限、共通テストの過去問はすべて解いておきましょう。つまり、2021年度〜2024年度、それぞれの年度のついて本試験と追試験、合計8セットは最低でも解くということです。
過去問の書籍のほか、共通テストの過去問はネットでも拾うことができます。
◎演習材料(2)センター試験の過去問
共通テストはかつて「センター試験」という名称でして、「共通テスト対策としてセンター試験の過去問を解くこと」の意義についてはこれまた色々と意見があるのですが、「データの分析」についてはセンター試験の過去問でも良い演習材料になると思っています。
特に「データの分析」に苦手意識のある方、センター試験の問題は共通テストのよりも解きやすいので、センター試験の過去問から入るのがよいと思います。
センター試験の過去問のうち、2015年度〜2020年度のものを解いてみてください(「データの分析」は2015年度から出題範囲となりましたので、それより前の過去問には収録されていません)。
センター試験の赤本や青本は手に入りにくいと思うので、過去問は次のサイトでご覧ください。
なお、その年度の問題すべてを解く必要はなく(共通テストと傾向が全然違う単元もあるので)、「データの分析」だけを8分測って解いてみてください。
このように、過去問のうち特定の分野だけを解きまくるという方法は、共通テストや数学に限らず有効です。
さて、ここまでは全受験生に共通する助言でしたが、ここからは高3生と浪人生、それぞれに向けて綴っていきます。高3生の方はこの直後の「■高3生のあなたに向けて」に、浪人生の方は「■浪人生のあなたに向けて」にお進みください。
■高3生のあなたに向けて
◎知っておいて欲しいこと
今年高3生のあなたは「新課程が適用される初の共通テスト」に臨むことになります。
現役生はそもそも旧課程のことをあまりご存じでないと思うので、正直、旧課程だろうと新課程だろうとどうでもいいであろうとは思います。それはその通りで、この辺の話は教師や講師はしっかり把握しておく必要がありますが、受験生は知らなくて全く問題ありません。
しかし、あなたにとって実際的な問題が1つだけあります。それは、出題範囲を完全に反映した過去問が存在しないということです。
具体的には、「データの分析」において、本番の試験に出てくると予想される「外れ値」と「仮説検定」が、過去問には一切出てきません。これらの内容は旧課程にはなかったものだからです。したがって、過去問を解いているだけではそれらの対策ができないのです。
高3生のあなたは、「■全受験生に向けて」でお伝えした内容に加え、「外れ値」と「仮説検定」の演習を積んでいきましょう。
◎最低限身につけておきたい知識
仮説検定について、「どういう議論の進め方をするか」を説明できるようにしておきましょう。下の記事をお読みいただければすぐにできるようになると思います。
外れ値については、問題を解いていくのが早いです。外れ値の定義は問題文に必ず書いてあるので、問題の意図を汲み取る練習が実践的です。
本年度指導している浪人生が、共通テスト模試で誤って新課程の数学IAを解いてしまったということがあったのですが、外れ値の問題を完答してました。
彼は浪人生なので外れ値のことは初耳でしたが、「問題文を読めばわかった」とのことでした。
つまり、読解の練習を積めば解けるようになるということです。
◎演習材料(1)試作問題
出題範囲を完全に反映した過去問が存在しないのはすでにお伝えした通りですが、高3生のあなたにとって、大学入試センターから与えられた手がかりが一つだけあります。
それが、試作問題です。
過去問にない「データの分析」の"仮説検定・外れ値"の他、「場合の数と確率」の"期待値"の問題も収録されている貴重な資料です。次の記事でわかりやすく詳しく解説しているので、本年度(2025年度)の受験生は必ず解いておきましょう。
上の記事の中でも言及していますが、試作問題は、「データの分析」と「場合の数と確率」以外の問題はすべて過去問の使い回しです。試作問題としては「データの分析」と「場合の数と確率」のみ解けばOKです。
◎演習材料(2)本年度受けた共通テスト模試
試作問題に匹敵する資料が、実はあなたのお家にあります。あなたが本年度受けてきた共通テスト模試です。
「うちの模試で出した問題が本番の入試で出ましたよ!」と言えると大きな宣伝となりますので、模試を主催している大手予備校は、個人レベルでは手に入らないであろう膨大なデータをもとに、"的中"を狙って模試の問題を作成しています。
実際、私が問題を確認した本年度の共通テスト模試は、上述の"試作問題"の傾向を反映させたものが多いです。演習材料が限られている高3生にとって、これを利用しない手はありません。
お家のどこかにあるであろう今年度の共通テスト模試を引っ張り出して解き直しておきましょう。
書き込みなどをすでにしていると思いますが、おそらく「数学I」と「数学IA」は同じ冊子になっていて、その両方に「データの分析」が載っていますので、真っさらな方を演習材料に使ってみてください。
共通テスト模試に限らず、本年度の受けてきた模試を直前期に解き直すのは結構おすすめです。あの頃解けなかった問題が解けるようになっていて、成長を実感できると思います。
◎演習材料(3)共通テスト総合問題集 河合塾
共通テスト対策として、大手予備校(河合塾、駿台、代ゼミ、Z会)が出している「共通テスト用の問題集」というものがあります。
例えば、駿台のものであれば数学IAを5セット分収録していて、つまり数学IAの共通テスト模試を5回受けられるようなものです(実際、過去に実施した模試をそのまま収録していることもあります)。
この「共通テスト用の問題集」を共通テストの対策としてやるべきか、については賛否両論なのですが、本年度の受験生に関してはやるべきです。
"否"の方の言い分は次の通りです。「共通テスト用の問題集」は過去問よりクオリティが低いので、そんな時間があるなら過去問をやるべきだ、と。
しかし、本年度の受験生は、「外れ値」と「仮説検定」が過去問に収録されていないのだから、仮に本当にクオリティが低かろうがやった方がよいと思います。
前述したように「共通テスト用の問題集」は河合塾、駿台、代ゼミ、Z会が出していますが、本年度に関しては河合塾のものが一番おすすめです。「外れ値」と「仮説検定」の問題が一番多く載っているからです。
以下、各問題集における「外れ値」および「仮説検定」の収録数は次の通りです。それらを少しでも扱っているセットをカウントしました。
河合塾
全4セット
仮説検定 3セット
外れ値 3セット
駿台
全5セット
仮説検定 1セット
外れ値 2セット
代ゼミ
全4セット
仮説検定 0セット
外れ値 0セット(※)
(※)外れ値の話が背景になっているセットは2つあったのですが、外れ値のことを直接的に問われているわけでなかったので0セットとしています。
Z会
全5セット
仮説検定 2セット
外れ値 2セット
また、数学IAにおいて、「外れ値」や「仮説検定」のように"本番で出題されると予想されるが過去問には載っていない"単元として、他に「確率」における「期待値」が挙げられます。
河合塾の問題集には「期待値」も全4セット中3セットに掲載されているのでそちらの勉強にも役立ちます。
なお、他の問題集における「期待値」の収録数は次の通りです。
駿台 全5セット中 4セット
代ゼミ 全4セット中 1セット
Z会 全5セット中 3セット
■高3生用 まとめ
共通テスト数学IAの単元のうち、「データの分析」は短期間でも伸ばしやすい。
直前期の詰め込みにおすすめ。
2025年度の共通テスト数学IA「データの分析」は、高3生と浪人生とで対策の仕方が異なることに要注意
■高3生のあなたに向けて
(1)お手持ちの参考書で最低限の知識を身につける
(2)データに苦手意識のある方は、センター試験(2015〜2020年度)の過去問からスタート
(3)共通テストの過去問(2021〜2024年度,それぞれ本試と追試,計8セット)をすべて解く
(4)試作問題を解く
(5)本年度受けてきた共通テスト模試を解き直す
(6)河合塾の共通テスト総合問題集を使う
やることが多くて大変ですが、「誰も過去問を持っていない」戦いでここまでやっておけば、他の受験生に対してかなり有利に立てること間違いなしです。
頑張ってください!
何かご不安なことなどありましたら、下の記事からぜひご連絡ください。本年度の高3生の方にとってはもう直前期ではありますが、「ここから何を重点的に勉強するのが正解か教えて欲しい」などのご相談も受け付けております。
高3生の方、最後までお読みいただきありがとうございました!
健闘を祈ります!
高3生の方の方に向けた記事は以上となります。
ここからは、浪人生の方に向けて綴ります。
■浪人生のあなたに向けて
◎演習材料(1)本年度受けた共通テスト模試
「■全受験生に向けて」の内容に加えて解いておきたい資料が、実はあなたのお家にあります。あなたが本年度受けてきた共通テスト模試です。
「うちの模試で出した問題が本番の入試で出ましたよ!」と言えると大きな宣伝となりますので、模試を主催している大手予備校は、個人レベルでは手に入らないであろう膨大なデータをもとに、"的中"を狙って模試の問題を作成しています。
お家のどこかにあるであろう今年度の共通テスト模試には、本番の共通テストで出題される問題が潜んでいるかもしれません。引っ張り出して解き直しておきましょう。
書き込みなどをすでにしていると思いますが、おそらく「数学I」と「数学IA」は同じ冊子になっていて、その両方に「データの分析」が載っていますので、真っさらな方を演習材料に使ってみてください。
共通テスト模試に限らず、本年度の受けてきた模試を直前期に解き直すのは結構おすすめです。あの頃解けなかった問題が解けるようになっていて、成長を実感できると思います。
◎演習材料(2)共通テスト用の問題集(ただし2024年度以前のもの)
過去問も本年度の模試も「もう完璧にやり込んだ!」のであれば、さらなる共通テスト対策として、大手予備校(河合塾、駿台、代ゼミ、Z会)が出している「共通テスト用の問題集」というものがあります。
例えば、駿台のものであれば数学IAを5セット分収録していて、つまり数学IAの共通テスト模試を5回受けられるようなものです(実際、過去に実施した模試をそのまま収録していることもあります)。
ただし、今書店に置いてある上のような「共通テスト用の問題集」、そして下のような「パック」について、「データの分析」の勉強としては浪人生におすすめできません。高3生に向けた新課程の内容になっているからです。
「データの分析」と「場合の数と確率」以外は浪人生にとっても演習材料になりますが、「整数」もありません(※)。
(※)浪人生のあなたは「場合の数と確率」「整数」「図形の性質」から2つ選択して解きますが、現役生は選択制ではなく「場合の数と確率」「図形の性質」を解きます。「整数」は共通テストから消えたのです。
したがって、もし追加の演習が必要だと感じたら、メルカリなどを利用して表紙に「2024」や「2023」と書いてある過去のものを購入(こちらのリンクからどうぞ)するようにしましょう。
もし「データの分析をもっと演習したいけど、過去のものが見つからない」ということであれば、本年度のものではあるものの、代ゼミの共通テスト実践問題集は(ギリギリですが)勧めることができます。
他の河合塾、駿台、Z会のものは「データの分析」に新課程の内容を多く組み込んでいますが、代ゼミの「データの分析」は浪人生のあなたが解けるものになっているからです。必要に応じて使ってみてください。
■浪人生に向けたアドバイス まとめ
共通テスト数学IAの単元のうち、「データの分析」は短期間でも伸ばしやすい。
直前期の詰め込みにおすすめ
2025年度の共通テスト数学IA「データの分析」は、高3生と浪人生とで対策の仕方が異なることに要注意
■浪人生のあなたに向けて
(1)お手持ちの参考書で最低限の知識を身につける
(2)データに苦手意識のある方は、センター試験(2015〜2020年度)の過去問からスタート
(3)共通テストの過去問(2021〜2024年度,それぞれ本試と追試,計8セット)をすべて解く
(4)本年度受けてきた共通テスト模試を解き直す
(5)2024年度以前の共通テストの問題集、あるいは本年度(2025年度)の代ゼミのそれを使う
ここまでやっておけば本番の「データの分析」で満点が狙えるはずです。
現役生が急激に伸びてくるこの時期、浪人生の方は精神的にもきついと思いますが、「なぜもう1年勉強を頑張ろうと思ったのか」を今一度思い出し、負けずに頑張ってください!
何かご不安なことなどありましたら、下の記事からぜひご連絡ください。本年度の受験生の方にとってはもう直前期ではありますが、「ここから何を重点的に勉強するのが正解なのかわからない」などのご相談も受け付けております。
最後までお読みいただきありがとうございました!それでは!
Ura