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共通テスト物理 原子分野を最短最速で Part2 光電効果②──光電管の実験の意味を理解する

こんにちは、Uraと申します。
予備校講師やプロ家庭教師として、小中高生を第一志望合格に導くべく活動している者です。

本シリーズでは高校物理の原子分野を解説していきます。テーマは「全くの0の状態の受験生の方を対象に、最速最短で共通テストレベルの問題を解けるようになっていただく」ことです。

前回は光電効果の仕組みについて解説しました。今回は、光電管と呼ばれるものを用いた実験を通して、光電効果についてもう少し踏み込んでいきます。

本記事で扱う光電管にまつわる問題は、共通テストの出題形式と相性が良いと思われる(理由は後述)にも関わらず、共通テストが始まった2021年度〜記事公開時点で最新の2024年度の間、一度も出題されていません。

個人的にはそのうち出題される可能性が極めて高いと思っています。一緒に学んでいきましょう。



■光子から電子へのエネルギーの受け渡し

簡単に、光電効果の仕組みについておさらいしておきます。

光電効果とは、「金属に光を当てると金属内の電子が飛び出す現象」のことです。

エネルギーに注目して見てみると、光の1つの粒子(光子)が持つエネルギー$${hν}$$が電子に渡されたことになります。

電子はその受け取ったエネルギー$${hν}$$の一部を「金属を飛び出す」ために使用し、残りを「金属を飛び出したあとの自分のエネルギー」とします。

◆Point
(電子が光子からもらったエネルギー)=(金属を飛び出すためのエネルギー)+(飛び出したあとに電子が持っているエネルギー)

なお、「飛び出したあとに電子が持っているエネルギー」は運動エネルギー、つまり$${\frac{1}{2}mv^2}$$と考えることとなります。$${m}$$は電子の質量、$${v}$$は電子の速さです。

つまり、

$${hν=(金属を飛び出すためのエネルギー)+\frac{1}{2}mv^2・・・(☆)}$$

となります。

金属を飛び出すためのエネルギー」は電子ごとに異なりますが、そのうち最小であるものを「仕事関数」と言います。よくWで表されます。

$${(☆)}$$式において、左辺が一定(光の振動数が同じ)であれば、「金属を飛び出すためのエネルギー」が最小の時、運動エネルギー$${\frac{1}{2}mv^2}$$は逆に最大となります。

◆Point
$${hν=\frac{1}{2}mv_{max}^2+W}$$

この先の光電効果の実験の話は、以上の基本的な仕組みをガンガン使っていくものになります。ここまでの内容が不安な方は、次の記事で詳しく解説しておりますので先にお読みください。


■光電管を用いた実験

それでは、いよいよ光電効果の実験をしていきます。

光電効果とは「金属に光を当てると金属内の電子が飛び出す現象」のことでしたが、電子は極めて小さいので、電子が飛び出したのかどうかを人類は目で確認することができません。

ではどうやってそれを確かめるかと言うと、 光電管(名前は忘れて大丈夫です)と呼ばれる装置を使います。

参考書などではもっと凝った図になっていると思いますが、仕組みを理解する上では上の図くらい簡素なもので十分です。

光電管の金属(陰極)に光を当てると、光電効果によって電子が金属から飛び出します。その電子が陽極に到達すると回路に電流が流れるという仕組みです。その電流を計測することで、電子の様子を確認することができます。

電子が流れることと電流が流れることは同じことです(向きは逆です)

◆Point
光電効果の実験は、回路に流れる電流を計測することによって、光電効果で金属を飛び出した電子の存在を確認するもの


■電流と電圧の関係を示したグラフ

金属を飛び出した電子のうち、どれくらいが陽極まで達するかはかける電圧に依ります。この様子を表しているのが次のグラフです。

縦軸の$${I}$$は回路に流れる電流の大きさ、横軸の$${V}$$は陰極(光を当てる金属の方)を基準点(0ボルト)とした場合の陽極の電位です。

このグラフはどの参考書にも載っているものですが、初見時の私の感想は「なにこれ意味わからん」でした。

いきなりグラフ全体を見るときっと意味不明です。グラフは滑らかにつながっていますが、$${V}$$の値が正と負の場合で全然違うことが起きているので、それぞれを分けて見ていきましょう。

◆Point
電圧が正と負とでそれぞれ何が起こっているかを理解する

(1)Vの値が正のとき

金属(陰極)を飛び出した電子が、陰極と陽極との電位差によって生じている電場の影響で、陽極側に加速します(電子はマイナスの電荷ですので、電場の向きと逆方向に力を受けることに注意です)。

結果、多くの電子が陽極に達することになり、回路には電流が流れます。

この実験において、電流の大きさは、陽極に到達する電子の数で決まります

電圧を大きくしていくと、金属を飛び出したすべての電子が陽極に達する瞬間が、割とすぐに訪れます。

すでに、金属を飛び出したすべての電子が陽極に到達する状態なのですから、これ以上に電圧をかけても(陽極側により加速させても)、陽極に到達する電子の数に変化はありません。

したがって、この瞬間に電流は上限を迎えます。際限なく大きくならない点に注意です。



電流には上限がありますが、ある条件を変更すると、上限値をより大きくしたり小さくしたりすることができます。何を変えるか、少し考えてみてください。

正解は「光の強さ(明るさ)」です。上で私は

金属を飛び出したすべての電子が陽極に到達する状態なのですから、これ以上に電圧をかけても(陽極側により加速させても)、陽極に到達する電子の数に変化はありません。

とお伝えしましたが、金属を飛び出したすべての電子が陽極に達してしまっている状態からその数をさらに増やしたければ、金属を飛び出す電子の数自体を増やしてしまえばよいのです。

光電効果では1つの光子が1つの電子を金属から弾き飛ばすので、金属を飛び出す電子の数を増やすとは光子の数を増やすこと、それはすなわち光を強く(明るく)することを意味します。

光の強さ(明るさ)が光子の数によることは大事な知識です。この辺が曖昧な方は「Part1」でご確認ください。

よって、光の強さ(明るさ)を変えることで、電流の上限値が変化します。

◆Point
電流の大きさには上限があるが、光の強さ(明るさ)を変えるとその上限値も変わる


(2)Vの値が負のとき

金属(陰極)を飛び出した電子が、電場の影響で今度は陰極側に加速します。

金属を飛び出した時の速さは電子によって異なります。飛び出した時点ですでにヘロヘロな電子はすぐに陰極にUターンすることになる一方、陰極側への力を受けながらも何とか陽極にたどり着く元気な電子もいます。

しかし、陽極の電位を小さくしていくと、電子が受ける陰極側へのクーロン力が強くなっていき、やがてどんなにわんぱくな電子でも陽極にたどり着くことなく陰極へ戻っていく瞬間が訪れます。

この瞬間の$${V}$$の値は阻止電圧と呼ばれ、入試でよく問われるポイントです。名称は覚えなくていいですが、値の算出の仕方は必ずマスターしておきましょう。

「一番活きのいい電子がギリギリ陽極に到達する」ときのエネルギーに注目します。一番活きのいい電子とは、金属を飛び出した瞬間の運動エネルギーが最大の電子です。

したがって、その電子について

$${hν(光子からもらったエネルギー)=\frac{1}{2}mv_{max}^2+W(仕事関数)}$$

が成り立っています。運動エネルギーについて整理すると、

$${\frac{1}{2}mv_{max}^2=hν-W}$$

陰極を飛び出した瞬間と、ギリギリ(速さ0となり)陽極に達した瞬間とをエネルギー保存則(運動エネルギー+静電気力による位置エネルギー)で結ぶと、電気素量を$${e}$$として、

$${\frac{1}{2}mv_{max}^2+0=0+(-e)(-V_0)}$$

静電気力による位置エネルギーは

(電気量)×(電位)

です。この辺が曖昧な方は電磁気学の分野も復習しておきましょう。

上の式を整理して、

$${\frac{1}{2}mv_{max}^2=eV_0}$$

超重要式です。単にこの結論を覚えるのではなく、この式に至る流れを再現できるようにしてください。そうすれば入試問題が余裕で解けるようになります

◆Point
$${\frac{1}{2}mv_{max}^2=eV_0}$$
に至る流れを再現できるようにする




グラフの見方をまとめると、次のようになります。

知識としては以上で十分ですので、あとは問題演習を通して「どの条件を変更するとグラフがどう変わるか」を学んでいきましょう。

■過去問演習:センター試験 2016年度 本試験 第6問(2)

私は冒頭で、光電管の実験が「共通テストの出題形式と相性が良いと思われる」と申し上げました。

その理由は、共通テストあるあるの「この条件を変えたら実験結果はどう変わるかなー?」という太郎さんと花子さんが大好きな疑問に出題を絡めやすいからです。

実際、センター試験では「グラフがこう変わったけど、どのように条件を変えたのかなー?」という問題が出題されています。練習していきましょう。

◎問題

このあと解答と解説を載せますが、まずは自力で考えてみてください。何も考えずに解説を見るのと、自力で考えた上で解説を見るのとでは天と地ほどの差があります。

自分の出した答えが間違っていても全然いいのです、間違っていたら印象に残りやすくなりますから。一方、何も考えずに答えだけを見たら、数分後には忘れています。

ここまでの話を読み返し、自分なりの答えを出した上で解答解説へと進んでください。






自分なりの答えは出ましたか?
では解答解説です。

◎解答解説

■まとめ

光電効果の実験は、回路に流れる電流を計測することによって、光電効果で金属を飛び出した電子の存在を確認するもの

電圧が正と負とでそれぞれ何が起こっているかを理解する

電圧が正のとき
・電子は陽極側に加速するので回路には電流が流れやすい
・電流の大きさには上限があるが、光の強さ(明るさ)を変えるとその上限値も変わる

電圧が負のとき
・電子は陰極側に加速するので回路には電流が流れにくい
・一番元気な電子でも陽極に到達できなくなる瞬間の電圧が阻止電圧
・阻止電圧の導出の仕方は再現できるように(入試で頻出)

光電効果の実験について解説してきました。いかがでしたでしょうか。

私は現在家庭教師のご依頼を募集しております。

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ご興味のある方は次の記事からぜひご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
あなたの受験がうまくいくことを心より祈っております。
それでは!

Ura

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