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2025年1月8日「白い牙」感想
昨年に聞いた「アメリカン・マスターピース」の「火を熾す」があんまり良かったので、
ジャック・ロンドンの本を買って、
少しずつ読んでいます。
気になる作家 ジャック・ロンドン
ジャック・ロンドンは、20世紀はじめに活躍したアメリカ作家です。
雄大な自然の中の厳しさで,生きる人や生き物を骨太に書く作風で有名です。
日露戦争の取材もしたらしく、
日本とも実は縁がある作家のようです。
雄大なスケール感とドライな質感で、
読んでいると気分が変わる作品が多く、
日常の仕事や生活に疲れた時に読むと、
私は、旅行に行ったような気分になります。
まだ見ぬ、雄大なアメリカ大陸を感じるのです。
さて、
Audibleでジャック・ロンドンを探すと一つだけ、
ヒットしました。
「こどものための聴く名作15 白い牙」です。
2時間と少しと言う大変短い作品だったのも決め手になりました。
時には短いものも聞きたいと思ったのです。
どうしてジャック・ロンドンにこれまで辿り着かなかったのか
さて、本作の感想に入る前に、
私がシートン動物記で育った人間だと言うことを書かねばなりません。
シートン動物記とファーブル昆虫記を読みまくっていた時期があったのです。
どちらも私の人格形成に大きな影響を与えていることでしょう。
動物、生き物に対する興味が芽生えたのもこれらの作品のおかげです。
今回の作品は「子どものための聴く名作」ですし、その頃の自分に戻ったつもりで聴きました。
と、同時に、どうして、子どもの頃、
自分はジャック・ロンドンの作品にまで辿り着かなかったのだろう…と不思議にも感じています。
狼犬「白い牙(ホワイトファング)」
さて、このお話は、
犬と狼の間に生まれた赤毛の狼犬の母と片目の灰色狼の間に生まれた狼犬「白い牙(ホワイトファング)」の物語です。
狼犬は、現在でもわりと人気で、SNSを見ていると時折、ブリーダーさんの投稿が流れてきます。
外見はかなり狼に似ていて、身体能力も高く、飼育するには、広い敷地やしっかりとした犬舎が必要な様子です。
それでも、愛情深く飼育されている狼犬の様子は格好良いだけでなく、愛らしいと感じてしまいます。
私は耳が立っている犬が好きですので、狼犬には憧れがあるのです。
この作品に出てくる白い牙(ホワイトファング)のことも、瞬く間に好きになってしまいました。
ジャック・ロンドンの描写力は凄まじく、ころころの仔犬、後のホワイトファングが初めて洞窟から出るところは、
聴いていて自然と映像化されました。
ただ、これは可愛い犬のお話ではなく、狼犬「ホワイトファング」のお話ですから、
大自然の厳しさはもちろん、
進むにつれて犬好きには厳しい場面も多々やってきます。
「子どものための」とは?
ジャック・ロンドンが、書く自然は生っちょろいものではありません。
ホワイトファングが仔犬のころは本当に可愛らしく描かれているのですが、
その母は冒頭で、ソリ犬や人間を襲う狼の群れの一員です。
つまり人を襲う狼の子供なのです、
ホワイトファングは!!
私は勘違いしてて、この冒頭が未来になるのかと思い込んでいたのですが、
時系列に物語は進んでいました。
結末までたどり着いて振り返ると、
そう言う出自のホワイトファングであっても
正しい関わり方をすれば、
変わるのだというストーリーなのですね。
これはなかなか衝撃的な設定です。
その上、大円団に辿り着くまで、ホワイトファングはかなり酷い目に遭います。
まだ動物愛護という概念が薄い時代です。
ホワイトファングの扱いは、人によっては、聴いていて(読んでいて)、かなり苦しいと思います。
ホワイトファングは、殴られ、他の犬をけしかけられ(闘犬に使われ)、罵倒されます。
これは、令和の時代の子どもには、かなり刺激が強いかもしれません。
私はその骨太さが大好きですが、
クレームを入れる人がいないと良いなぁ…などと老婆心ながら心配してしまいました。
とはいえ、これでもこのAudibleは、原作より子ども向けに編集されているのかもしれません…。
もっとひどい描写をかける場面はいくらでもありますから…。
犬への関わり方
さて、物語の終盤、ホワイトファングは、ウィードン・スコットという判事の息子と出会い、その犬生?狼生?を大きく変えていくことになります。
(ウィードン・スコットは判事の息子とあるので、ずいぶん若いお兄さんなのだと勝手に思っていたのですが、
奥さんも子どもちゃんといて、
いくつくらいなのか、よくわからなくなります。
100年以上前に描かれた話なので、奥さんも子どももいるとはいえ
20代なのかもしれません。)
ウィードン・スコットのホワイトファングへの関わり方は、
非常に近代的なものです。
暴力でなく、ホワイトファングの信頼を勝ち得て、関係を結びます。
ホワイトファングの賢さを理解した上で。怖がらせたり、罵倒したりすることはありません。
また、飼い主との分離不安症状を描写している部分もあり、
ジャック・ロンドンは、当時としてはずいぶん進んだ犬への関わり方や視点を持っていたようです。
ホワイトファングを人から嘲って笑われるのをひどく嫌うタイプだと描いていることも興味深いです。
犬はそういうことをちゃんとわかっていると、ジャック・ロンドンは知っていたのですね。
また、他の犬や人から邪険にされ、闘犬に出されてすさんで行く、ホワイトファングの心理描写もなかなかです。
犬も孤独と暴力に疲弊する動物であるとジャック・ロンドンは考えていたようで、
動物愛護、いや動物福祉の萌芽がすでにこの時代からあったのだと驚きました。
「野性の呼び声」も気になる
ジャック・ロンドンは、
ホワイトファングと反対に、飼い犬から、
そり犬になり、
最終的には狼と暮らすようになる物語、
「野性の呼び声」も書いているそうです。
こちらも気になります。
Audibleでは作品が見当たらないのが何とも残念です。
紙の本で読むことになりそうです。
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