サヨナライツカ
忘れられない恋物語
いつも人はサヨナラを用意して
生きなければならない
孤独はもっとも裏切ることのない友人の
一人だと思うほうがよい
愛に怯える前に、傘を買っておく必要がある
どんなに愛されても幸福を信じてはならない
どんなに愛しても決して愛しすぎてはならない
愛なんか季節のようなもの
ただ巡って人生を彩り あきさせないだけのもの
愛なんて口にした瞬間、消えてしまう氷のカケラ
サヨナライツカ
永遠の幸福なんてないように
永遠の不幸もない
いつかサヨナラがやってきて
いつかコンニチワがやってくる
人間は死ぬとき
愛されたことを思い出すヒトと
愛したことを思い出すヒトとにわかれる
私はきっと愛したことを思い出す
この詩は、辻仁成『サヨナライツカ』の冒頭に書かれているものです。
初めて読んでから、何年経ったかわからないけど、何度も読み返してしまう。何回読み返したか数えられないほど。
年齢が変わるたびに読んでいるときの感情が、
毎回違ってくるんですよね。
初めて読んだときは若かったので、愛についてライトな感覚というかふしだらな空想に耽ったりしてましたね。
それから何度も何度も読み返している。
ある日突然思い出して読みたくなって、一気に読み切ってしまう。
その度に冒頭に書かれている詩について、
考えることがある。
詩の最後のところ、
人間は死ぬとき
愛されたことを思い出すヒトと
愛したことを思い出すヒトとにわかれる
この部分を深く考えてみたりする。
読むたび、自分が今置かれている、過ごしている環境に応じて、導きだす答えが変わってくる。
ストーリーに出てくる人物に感情を重ねて、感情が入り込みすぎて、読みながら何度も泣くこともあるし、違うときはすごくドライに淡々とストーリーを客観視して捉えることもある。
作中に出てくる好青年を羨ましく思うこともあれば、苦々しく見えてしまうこともあるし、
なんでだよ!と責めることもあるくらい感情を持って読むこともある。
または出てくる女性2人、沓子・光子の感情に寄り添って読んだり、文章に描かれていない時間を部分をイメージして、彼女たちはどんなことを思っていたのだろうと考えたりすることもあったりする。
それを踏まえたうえ、もう一度好青年の目線から2人の女性に対する思いや感情を考えながら読んだりして、何度も何十度も読み返しても、結末がわかっていてもたまらなく読んでしまう。
これからも何度も読み返していく作品で、
オススメの小説を聞かれたときにはこれを伝えていたりしますね。
note公式の2月前半の特集テーマのバレンタインの中から#忘れられない恋物語をセレクトして、この記事を書いてみました。
冬の夜長に是非一度読んでみてくださいませ。
読む前と読んだ後では愛について少し見方が変わるかもしれません。
最後にあなたはどちらですか?
愛したことを思い出しますか?
愛されたことを思い出しますか?
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
それではまた。