見出し画像

【読書ノート】35「最後の講義 完全版 これからの時代を生きるあなたへ安心して弱者になれる社会をつくりたい」上野千鶴子

社会学者で東大教授だった上野千鶴子氏の講演を書籍化したもの。フェミニズムで有名な氏の著作は初めて読んだが、日本社会に対する深い洞察で考えさせられ事が多い内容だった。

  • 日本の社会がケア(家事、育児、介護やでき)の公共化も市場化も出来ず全てのケアの負担を昔からすべて女性に押し付ける構造になっている。

  • それに加えて現代の女性はケア負担そのままで外に出て働く。

  • そのため男性がケアを分担するは至極当然、

  • 日本社会は父・夫などの男性がいない女性の多くは貧困状態に陥るリスクが高い。

これらの問題は日本社会だけでなく欧米社会でも提起されている問題で、以前読んだ「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」と相通ずる内容である。併読すると女性不利に構築された現代の社会構造が立体的に良く理解できると思われる。

また、多くの若い女性が社会に洗脳されていることにも言及している。

 わたしは、年を取るとアタマが固くなるとはこれぽっちも思っていません。はっきりいって、若いひとたちのほうが、思いこみが強くてアタマが固いと思う。「尽くすのは女の美学」とか「夫婦ってこんなもの」みたいに、洗脳されているのよね。洗脳装置は教育とメディアですよ。メディアの責任はものすごく大きいです。
 年を取るっていうのは、現実の多様性にぶつかって、脱洗脳、つまり洗脳が解けていく過程なので、わたしは年を取ったほうがはるかに柔軟になって、寛容になりました。それからあんまり怒らなくなりました。

(第13章)

(2023年1月11日)


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?