夕闇の川のざくろ 感想

作者 江國香織



<あらすじ>


孤独で嘘つきな少女「しおん」、
そしてしおんの唯一の友人の「私」との二人で物語が紡がれていく。

といっても、大事件やサスペンスなどが起きるわけではない。
”ほんと”
とは何かをずっと探し求めている物語である。
文学小説でありながらやや哲学寄りである。


<感想>


「人なんてもともとほんとじゃないのよ」

12

しおんが何度も言う口癖のような言葉。

または

「現実なんてちっとも意味がない」

40

「現実なんて作為的な錯覚にすぎないし、人はみんな物語に便乗して、知り合いのふりをしてうろうろするので油断がならない」

40

とも言うのだった。

そして彼女もまたほんとじゃない話を「私」に語るのだった。

どことなく、切なくて寂しい。

私には、しおんがほんとじゃないけれど、実際にはほんとであってほしいと真実を探し求めている気がするのだった。



<私なりの解釈>


少なくとも、しおんは少女である。
まだ大人でもないのにこんなに諦めと冷静さを持っているだなんてと思ってしまう。

むしろ、子どもと大人の狭間で揺れている少女だからこそなのか。
回りへの疑心暗鬼。

本編中にはかかれていないが、しおんが美しいゆえの周りからの妬みや恨み、あることないことを言われてしまう環境にあったのかもしれない。

そのような育ち方をしてしまっていてはその境地に至るのもわかるやも知れない。

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