SwitchCaseReality
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トテテテッ------ そんな効果音が似合いの動作で、彼女は歩く。 地面から足底までかなりの距離をとるヒールを履いているにも関わらず。 ------この娘は、強く理解していた。 男、漢、紳士、オス、雄…どう呼称されていようが、それらの類の生物は自身の色香を持ってすれば容易くコントロールできてしまうことを。 「アハッ☆」 ベロア素材のチューブトップにタイトなミニスカートという時代錯誤の感があるファッションを、その他のアイテムを駆使することで見事に現代風にアレンジする
------カタカタカタ… 俺は、自室にこもりPCとにらめっこをしながら、一心不乱にアルファベットの羅列をタイプしていた。 「やっべ、もう三時かよ…」 ふと時計を見やると、かれこれ十時間は経過してしまっている。 …ここ数日、そんな日が続いている------ 中学卒業と同時期に始めたモノクロとしての活動も、いつのまにか三年目を迎えていた。 昨年末にリリースした大型RPG「ma★na」はモノクロ史上最大のヒット作となり、メンバー全員がこの活動一本でも生活が成り立つほど
「はぁ、はぁ…ムシャムシャ…んはぁぁぁ!おいちい!!レロレロ…」 爆弾魔は、我を忘れ《足》を貪っていた。 突如として現れたaliasの姿にも気付かず。 その《修羅場》に対する舐めた意識と、涎を垂らしながら私欲を満たす劣悪極まりない姿------ 「若い女の足ィィィ!そしてぇ…この後は…服を脱がせて…ムフゥゥゥゥゥゥ!もう我慢できなぃぃぃィィィィィ!!」 爆弾魔は自身の歪みきった食欲に続き、性欲までもクロエにむける。 ぎりっ…プツンッ バーサーク状態にあるalia
地獄絵図------ 二人の少女が平穏にショッピングを楽しんでいた場所は、そんな言葉でしか形容できない景色へと一変した。 美しく陳列されていた商品群は散乱し、ピカピカだったフロアの床には血と臓物が飛び散っている。 群衆はひとところに集結して身を震わせ、突如現れた醜悪かつ異常な爆弾魔を見据えていた。 ここにいる全員が逃げ出したいと願っている。 だが逃げ出せば、先の男と同じ運命を辿ることは明白であった。 そう、肉体を内部から破壊され命を落としたあの男のように… 群衆
「おぉ、君がクロエ君か。亜矢から話は聞いているよ」 「鼻の下伸びてるわよ。お父さん」 ゲシッ 亜矢が父にひじ打ちをくらわせる様子を、笑って見ている少女------ 彼女こそ、亜矢が紹介し黒咲家の大黒柱である茂にスポットで雇われた《人材》である。 「イテテ…ハハ、まいったな。いきなりクロエ君にお恥ずかしいところを見せてしまった」 「い、いえ!楽しいです」 「まったくもぅ。いらっしゃいクロエ」 「こんにちは、亜矢ちゃん」 クロエは少々、緊張した様子だ。服装も、T
-------ザワザワ 巨大交差点を縦横そして斜めに交差した白線の上を行き交う人々を横目に、亡き飼い主を十年待ちつづけたという犬をモチーフにした銅像の下で、私は人を待っていた。 世界でも有数の、高い人口密度を誇る街。 渋谷------- 私はよく、ここを待ち合わせに使う。 そう、大切な人と将来を約束したあの日も、ここで雪の中待っていた彼に傘を… 不意にその日の思い出がよみがえり、顔が熱くなる。 ぶんぶんっと頭を振り、正面を向くと、人混みの中から現れた一際目立つ容
最初に仕掛けたのは、小百合。 ルーカスによる戦闘開始の合図とほぼ同時に、Katanaを発動させた。 手にした木刀が光と風を帯びる。そして小百合ではなく木刀そのものが、強力な引力に引き寄せられるかのように真っすぐにaliasへ向かっていく。 その様を形容するならば、まさに《 ミサイル 》------ 無論、武器に宿る力に任せて小百合が何もしていないわけではない。 E-PSIerである小百合はそのミサイル級の突進力を持った木刀を制御しつつ、次の技への展開を予測したうえで
私がCPPに加入して、一週間が経った。E-PSIが発動してからは十日... この十日間。私は、名取さんやCPPの研究員・戦闘員の方の協力を得て、自身のE-PSIについて調べることに費やした。 私のE-PSIの効力は、刀を使って戦闘をした時、物理法則を無視する…とでも言うべきものだった。 …なるほど、と思った。私が麗花に力で勝つなんて、そんな能力じゃないと実現しない。 ただ、これだけ聞けば強力過ぎる能力に思えるけれど、CPPのメンバー曰く 「E-PSIには、発動条件や
麗花は、私に剣で突き飛ばされ壁に激突して尚も明るく------ 「ま!さゆっちがこんだけ元気になったなら安心だっち!」 そう言い残して、全国大会の会場へと向かっていった。 ありがとう と伝え、また心の中でその何倍も感謝の言葉を連ねながら麗花を見送り、午後は麗花の試合を応援しに行こうと決めた。 しかし、一方で私は自分に起きた変化に激しく戸惑っていた。 麗花は、鬼神と同じレベルの体格と力を持つため、今までの試合では私の得意分野であるスピード勝負に持ち込めるか否が勝敗を分
------…チチュン 設定したアラームより少し早く、小鳥のさえずりで彼女は目を覚ました。 まだ覚醒しきっていない脳と身体をゆっくりと新しい朝に溶け込ませ、少女が与えられるにしては少し広過ぎる自室の床を踏み、お気に入りの藍色のカーテンを開ける。 抜けるような快晴…陽の光が一瞬、彼女を訝しい表情へと変化させるが、すぐに眼は慣れて普段通りの様相を取り戻す。 自室のドアノブを廻し、家族と朝食を囲むために彼女はリビングへと向かう。 「おはよう。お父さん、お母さん」 リビン
私の名は、ルーカス・ギルバート------。 Central to ParallelProcessing 通称CPP という組織に所属している。 ミッション時に発生する戦闘において、最前線を担うナイス・ガイだ。 私がCPPに加入したのは今から三年前、CPPの設立とほぼ同時期である。 CPP以前は祖国で軍人として従事し、日常的に戦地に赴いては銃火器を主とした戦闘に身を投じていた。 世界各国のトップがどれだけ平和を唱えたところで一向に無くならない戦争。 働く場所には困
「…------ヨウコソ」 「タカハシリサ研究員ハ,八階ニイマス.コチラニオノリイタダケレバ一瞬デトウタツイタシマス」 今日は、十二月二十七日。 俺は、再びE-SigLaboを訪れていた。 CPPへの推薦話に対する " 答え " を伝えるため、りさセンからもらったメールの通りEやって来たというわけだ。 エレベーターを降りると、相変わらず白衣を着た男女がドタバタと走り回って大声を上げている。 俺はきょろきょろと辺りを見回し、りさセンの姿を探す。 フロアの喧騒の中を
俺は亜矢と地下鉄に乗り、亜矢から受け取ったチケットのイベントが開催される場所へとやってきた。 「亜矢、このチケット一体どうやって入手したんだ?」 「うふふ、秘密ー♪」 ここは、《横浜アリーナ》。 俺の姉が所属するアイドルグループ《ラヴァーラビリンス》 通称 " ラヴラビ " のライブ会場である。 姉がイブに大きな会場でライブをすると喜んでいたのを聞いてはいたものの、まさかそこに亜矢と俺が招待されるとは… 関係者用の席に案内された俺達は、幕が上がるのを待った。
夜が明けると俺は、PCのスピーカーからの------ポーンッ という音で目を覚ました。 大事な予定を通知するアラームだ。 今日は俺が率いるゲーム開発チーム《モノクロ》の、定例ミーティングの日。 従来通り、ミーティング専用のアプリケーションを使用しオンラインで取り行う予定でいる。 モノクロのメンバーは皆律儀で、規定時間の五分前にはログインを済ませ、社交的な者などは他愛ない雑談に興じている。 メンバー間の関係は様々で、俺と亜矢のように日常的に顔を合わせる仲の者もいれば、
目を覚ますと、時刻は午前九時を回っていた。 今日が平日であったなら完全に寝坊による遅刻が確定している時間だが、幸いにも今日は土曜日だ。 …昨晩りさセンが俺の家を訪ねてきた後、俺は再び真夜中のプログラミングにいそしんでいた。 寸暇を惜しんで開発を続け、遂にma★naが目標としていた水準で完成し、眠りについたのは午前四時だった。 今回、開発期間が長かったため喜びもひとしおであるが、まずは気になる予定を済まそう…と考える。 朝の身支度をして、りさセンから渡されたメモに書か
------亜矢誘拐事件から、一週間が過ぎた。 「おっはよー!あ、新君!ケガはもういいの?」 ケガも大分良くなり、久しぶりに学校に登校した俺が廊下で最初に出会ったのは、俺のクラスの担任教師、りさセンだった。 「りさセン先生、おはようございます。心配かけてすみません。もう大丈夫です」 俺はりさセンの前で”りさセン”と呼ぶのに抵抗があるため、明らかな重複表現だが、先生を付けて呼ぶようにしている。 …はっきり言って意味があるとは思えないが、最初にりさセンの愛称をクラスメイ