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洲本という地名と日本神話

淡路島の中央部に位置する、兵庫県洲本市。
洲本の名の由来は、市のホームページに記載されている。

「洲本は往古海浜の洲にあったので、地名を洲本と呼ぶようになった」

なるほど、事実に即したもっともな理由ではある。
しかしこの説明は、古からの正確な地名の由来を含んでいるのだろうか。

日本列島の誕生に際し、国生み神話として最初に登場する淡路島。
その中心地である洲本の名は、もっと神話に即しているのではないか。
洲本市で育った者として、そう思わずにはいられない。

洲本の「洲」について、考えてみたい。
実は日本書紀では、淡路島は「淡路洲」と表記され
「あはぢのしま」と読むように指示がされている。

「洲」という字に
島の意味をもたせている。

しかしながら、それ以外の意味にも「洲」は使われている。

日本書紀の第6段の本文を見てみよう。
「是を以て、幽宮を淡路の洲に構りて、寂然に長く隠れましき」

伊弉諾尊が国生みをはじめとする神の仕事を終えたことを意味する段。
ここでは、淡路の洲を「あはぢのくに」と読ませている。
この点が非常に重要だ。
日本書紀の神代巻で、ほかに洲を「くに」と読ませた箇所はない。

大八洲國(おおやしまぐに)のように
国の意味を持たせるときは、「國」の字を用いている。

すなわち淡路洲は島であり、国であるということである。

たとえばオノゴロ島には、
日本書紀では嶋という字をあてている。
これはすなわち文字通り、島のことである。

伊弉諾尊は国生みをはじめとする神の仕事を終え
たしかに淡路洲の幽宮にて、余生を過ごされたのだ。

「洲」という漢字は単純なようで
深淵なる意味も含まれている。

とくに日本書紀おける、淡路洲は国生みの最初の地として
伊弉諾尊のおはします地として、きわめて重要な洲(くに)なのだ。

ひのもとの国こそ「日本」なれば
洲(くに)のもとの地こそ
洲本に他ならない。

兵庫県洲本市の洲浜橋を眺める景色

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