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・会計関連の話(企業分析・事例を含む)

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企業分析の解像度を上げる:事業・セグメント分析+四半期分析を活かす 信越化学工業のケース

企業分析の解像度を上げる:事業・セグメント分析+四半期分析を活かす 信越化学工業のケース

事業・セグメント分析、四半期分析を活かす分析の方法についてお話します。
企業分析においては、成長性、安定性、収益性の3観点から行う人が多いと思います。さらにその要素に株価分析をプラスしてみていくという形ですね。

分析手法は無数にありますし、どういった視点で分析するかによって使うべき手法は異なります。そんな中でも難易度の高い分析の1つは事業・セグメント分析と四半期分析ではないでしょうか。

という

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繰延税金資産に関する理解を深めよう

繰延税金資産に関する理解を深めよう

1.    税金の支払いは、当期純利益を押し下げる

繰延税金資産は、税金の前払い部分を資産計上しているものです。法人所得税は費用ではありませんが、税引前当期純利益から差し引かれて、当期純利益が求めれられることを考えると、収益から差し引く点において費用と同じ性質を持っています(収益を押し下げる効果があります)。なので、繰延税金資産のことを考えるときに基本知識として理解しておくべきなのは、前払費用の

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その資産は本当に資産として相応しい?費用化の意味と「のれん」について考えてみよう。

その資産は本当に資産として相応しい?費用化の意味と「のれん」について考えてみよう。

財務会計論で使っている講義用の資料からの転載です。一部手直ししながら載せておきます。

今回のポイント:
 ・資産性と償却(費用化)の意味を考えよう。
 ・「のれん」の会計処理を巡る考え方の違いを理解しよう。

1.    その資産は本当に資産として相応しい?

資産とは企業が支配し、便益を享受できる経済的資源です(概念フレームワークを確認しましょう)。しかしながら、貸借対照表の項目においては、「

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2022年3月期決算短信、決算発表の雑感:ESG情報が充実、人的資本開示はこれから、DX推進を盛り込む企業が多い、Non-GAAP指標には注意

2022年3月期決算短信、決算発表の雑感:ESG情報が充実、人的資本開示はこれから、DX推進を盛り込む企業が多い、Non-GAAP指標には注意

 学生がレポートして分析した約110社の上場企業の決算発表・短信をみてみた雑感をまとめておきます。なお、これはあくまでも雑感なので、定量的には確かめているわけではないです。むしろ、どういったキーワードでまとめられているかどうかについて「あたり」を掴むための作業です(今後、定量的な分析を行っていきます)。

 今回は学生のレポートに書いてあることを確かめるために分析対象とした企業の決算短信・発表のデ

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財務会計論の中間レポート:学生も教員も成長を実感し、楽しめるのが一番

財務会計論の中間レポート:学生も教員も成長を実感し、楽しめるのが一番

2022年3月期の決算短信・発表のチェックを行っていました。

今回は個別の企業の話ではなく、一通り見た雑感を備忘録として書いておきます。まず今回はレポートを出してみての振り返りをしていきます。

私の勤務校で担当している財務会計論では、上場企業の3月期決算のIR(自主的開示)情報をチェックする課題を出していました。

課題は、良い企業のディスクロージャーを探してみよう、ということで以下の5つの要

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トヨタの株はなぜ上がり続けるのか?

トヨタの株はなぜ上がり続けるのか?

トヨタ自動車の株価が上がり続けていますね(2021年6月16日現在)。この要因についてはどうみるべきでしょうか?トヨタ自動車の2021年3月期の業績と今後の業績予想を振り返ってみましょう。

まず販売台数ですがコロナ禍の影響もあり、2020年3月期と比較すると14.6%減の7,646千台にとどまりました。業績については営業収益もそれに比例して下がっています。また営業利益も減となり減収減益であったこ

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好業績でも株価はダウントレンド:島忠買収による不確実性が嫌われた?ニトリの決算発表を読み解く

好業績でも株価はダウントレンド:島忠買収による不確実性が嫌われた?ニトリの決算発表を読み解く

決算発表のシーズンです。

さて、そんなシーズンですが、2月期の決算ということで、少し前に発表されたこちら、ニトリホールディングス(以下、ニトリ)の決算をみていこうと思います。

決算発表においては、昨年度、目標としていた数値を達成できたのかを①全体の業績推移(収益、利益、資本(純資産)は要チェック!)に着目しつつ、②今年度以降の事業計画の実現可能性を検証し、決算発表後の③株価(市場)の反応をみて

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決算発表の読み解き方

決算発表の読み解き方

決算発表の時期になりました。

決算発表は、上場企業における情報開示制度の一つです。

上場会社は、承認された決算案を公の場で発表しなければなりません。

いわゆる決算短信の開示です。

この決算短信は、会社法で定められた制度ではなく、上場している取引所により求められています。

東京証券取引所(東証)は、決算短信の開示を「決算期末から45日以内」に実施するように企業に求めています。

いわゆる4

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財務会計とファイナンス

財務会計とファイナンス

最近学べば学ぶほど会計って面白いなぁと思う日々です。

特に私が専門とする財務会計が面白いと感じています。

面白いからやっているのですが笑

もちろん、管理会計も好きです。

趣味は管理会計です!

管理会計は、経営とダイレクトに繋がっている会計ですし、より実践的というイメージがあります。

経営コンサルタントのような仕事をするのであれば管理会計の知識、技能が必要でしょう。

よりよい管理会計、

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財務会計の面白さ:情報提供のニーズは時代とともに変化する

財務会計の面白さ:情報提供のニーズは時代とともに変化する

私は会計とは、人生を豊かに生きるためのツールであり、お金に対する説明力である、捉えています。

さて、そんなことを考えている私ですが、専門は、会計学の中でも「財務会計」になります。

財務会計とは何でしょうか。

財務会計は、外部の利害関係者に説明するためのルールを定めていて、最適なルールを追求する分野である、と捉えています。

どのようなルール、取り決めが良いか、ということを提案していくというの

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「会計力=お金に対する説明力」である:豊かな人生を生きるために会計を学ぼう

「会計力=お金に対する説明力」である:豊かな人生を生きるために会計を学ぼう

会計を覚えて投資をしたいです!

という学生からの相談を受けます。

私は常に言っているのですが、

会計を覚えても直接投資の力は身につかないとは思います。

もちろん、会計力を高めることで、企業業績を読み取る力が身につきます。

これが投資判断には役立つという点はあります。

ただし、投資判断を行う為には、経営学(経営戦略、組織論、ガバナンス)などと合わせて、コーポレートファイナンス、必要に応じ

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東芝への買収提案から見えてくること:CVCキャピタル V.S. エフィッシモ

東芝への買収提案から見えてくること:CVCキャピタル V.S. エフィッシモ

こちらの記事でも取り上げました、臨時株主総会の結果で株主側の要求を呑むことになった東芝ですが、ここにきてまた大きな動きがありました。

なんと、英CVCキャピタルからの買収提案です。

(ブルームバーグ): 東芝は7日、英投資会社のCVCキャピタル・パートナーズから買収に関する初期提案を6日に受領したことを明らかにした。事情に詳しい関係者によると東芝は7日に取締役会を開き、CVCの提案などについて

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野村HDの2,200億円の損害とその影響を考える:儲かっている時こそ用心、問われる海外子会社のガバナンス体制

野村HDの2,200億円の損害とその影響を考える:儲かっている時こそ用心、問われる海外子会社のガバナンス体制

野村ホールディングス(以下、野村HD)が大きな損失を発生させました。

こちらの記事をご覧ください。

野村ホールディングスは29日、米子会社で顧客との取引に起因し、多額の損害が生じる可能性のある事象が発生したと発表した。当該顧客に対する請求額は26日時点での市場価格に基づく試算で約20億ドル(約2200億円)という。業績に与える影響が判明次第、速やかに公表するとしている。

詳細は不明ですが、2

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綺麗ごとではなくお金で説明していく

綺麗ごとではなくお金で説明していく

建て前的な議論や話はあるとは思いますが、最近感じることはちゃんと貨幣、お金で説明することが大切なんではないかと。

お金で測れないもの。

あります。

幸福度などの主観的なものもありますし、私たちの感情を数値化するのは不可能でしょう。

最近の世の中の流れを見ていて、お金に関することを避けた綺麗事の議論が多過ぎる、と感じています。

バラマキによって生じる将来負担もそうでしょう。

コロナ禍で大

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