#28 INFJには向いてない⁇合格率1%!最難関の士業「印鑑押印士」に迫る!
これは、書類への押印に嫌気がさしてしまった
一人のINFJによる業腹物語である。
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もうかる?印鑑押印士とは
サラリーマンの私は、デスクワークがメインだ。
その仕事の一つに、書類に印鑑を「押す」という行為がある。
これが、とにかく嫌いである。
いや、先に弁解させてくれ。
印鑑を押すことによる効果・効能については理解しているつもりなのだ。
これは私が承諾した、とか、これについては承認します、とか、要するに責任の所在をハッキリさせたいがためのものだろう。
あるいは、これは我が社が出した証ですよーとか、客観的に公的なものですよー、などという証明的なものだろう。
それらはまぁ、良しとしよう!
日本の仕組みが変わらないかぎり、それらは今後もある程度は必要なんでしょう?
(心の中ではクエスチョン、いえ、中指が…)
しかし、だ。
そうじゃない書類って、いっぱいあるじゃないですか!いや、多すぎだろ!
だから、嫌いなのです!
しかも、押印するにあたり、10秒ぐらいはかかりますよね。
① 書類を用意してっと、
② 朱肉はどこだぁ、あぁん?
③ あったあった、いつもと違う場所に入れちゃってたぜぃっと、
④ 朱肉をチョンチョン
⑤ よし、ここだな、押すぞ?
⑥ よーいしょっ!
⑦ (押した箇所をチラ見…) よし、綺麗だな。
⑧ さーて、次の書類はぁ、トントンっと…
なんてチンタラやってたら、20秒はとられます。
ホント、嫌いな理由は、無数にあります。
(いや、もしかすると、押印ではなく、無駄な書類作成業務に嫌気がさしてるだけかも…)
まぁ挙げればキリがないので、それを象徴するエピソードをご紹介しましょう。
遡ること数年前…
かつて、100件分の書類に、1,000箇所押印するという地獄の作業を2時間以内に終えるよう命じられたことがあります。
※数字の前に「約」がついてないのは、私にとっての「業腹ランキング」トップ10入賞案件であり、未だに正確な数字を覚えているからです。
なぜ100件なのに、1,000箇所も?
と思ったそこのあなたは、やっぱりINFJですね。
このカラクリは「割印」という日本古来の手法なのですが、ある特殊な技術を使う必要があり、とても繊細な工程を踏んでいます。
※割印時などに紙を「折る」という作業は、いわゆる「名もなき家事」のように、「押印」という行為の一部を構成しているにもかかわらず、あまり認識されていないウザったい工程の一つです。
さて…
2時間は7,200秒です。
1押印あたり約7.2秒です。
これを、7.2sec/pushとして、7.2sp(エスピー)といいます。
まぁ、書類の形状や押す場所、ハンコの形状や重さに左右されるところはありますが、一般的なサラリーマンの平均spは、5sp〜8spと言われていますから、頑張れば可能な範囲です。一応、業務の範疇を超えてるとまではいえないし、パワハラ認定は無理でしょう。
そこを私は、怒りのパワーを最大限合理的に変換して、なんと1時間で終えました。
これ、ヤバいです。
平均spを遥かに超えた「3.6sp」という、驚異的な記録を叩き出したのです!
押印の精度はもちろん、押印の秒数にまで、理想と完璧を求めてしまうところは、紛れもなくINFJですね…おそらく社内史上最高記録です。
なのに上司は、なのになのに…
「意外と早かったな」の一言。
おいコラまて!
腕、パンパンやぞ!
もっと大切な仕事が、他にあるんだよ!
…まぁ、昔の話です。水に流しましょう。
最近は、ペーパーレス化がかなり進んだかのように錯覚することもありますが、未だに、電子データのみの作業よりも、紙による作業が圧倒的だと思っております(職種によりけりかもですが)。
そんなときは、彼らの力を借りるしかない!
そう!それは…
印鑑押印士!(通称:押印士)
※士業なので、クライアントからはもちろん「先生」と呼ばれます。
またの名を、HOD(ホッド)。
※「ハンコ、オス、ダケ」の人です。世界に類をみない日本特有の職業なので、海外向けにはこのように表記することが増えています。
では早速、彼らの素晴らしき業務内容をお伝えしましょう!
うわさの?HODの業務内容とは
それはつまり?押印業務
当たり前ですが、「書類への押印」がメインです。HODにとっては、これがその全てといっても過言ではありません。
しかし、彼らもプロですから、我々一般サラリーマンが行っているような、生半可なものではありません。
プロ押印士になるには、押印士試験の実技項目において、2sp以下の成績を叩き出さなければならないのです。
これが俗に言う"2秒の壁"です。
なんせ、社内全部の書類に押印する必要がありますから。想像しただけで気が狂いそうです。
部署ごとに扱う書類も違いますし、それぞれ重要度や緊急度も違います。
取り扱うハンコの種類だって、「済」や「未済」、「簡易書留」などの郵便関係、クライアント独自のスタンプ系(株式会社●●など)から、シャチハタ、三文判、日付印、銀行印、会社印、代表者印に至るまで、その種類たるや、まさに森羅万象、玉石混交です!
押印業務に当たっては、当然、全てのハンコをクライアントに用意してもらうわけなんですが、ハンコの用意の仕方もマチマチで、ここをどのように調整するかが、HODの腕の見せ所です。
まず、どのハンコが誰のものであるかが分からないと、後で書類を返しに行けなくなるんですよね。記憶力もかなり重視されます。
これは、後述する「押印付随業務」をどこまで契約に盛り込むか、にもよるんですが、一般的なクライアント契約の多くは、押印後の書類を担当者まで届ける「書類返還業務」が含まれています。
そのため、多くのHODは、返還業務を引き受ける場合、ハンコと顔写真・部署名をセットにした使用者対応表(業界では「顔表(かおひょう)」または「FB(フェイスブック)」と呼ばれている)を用意することをお願いしています。
仮に、HODに押印をお願いしてきた人間が役員だった場合はすぐに分かりますが、そうでない有象無象の一般社員の場合、どこの誰だか一瞬にして分からないと、その書類の「レベル感」がボヤけてしまい、押印スケジュールを調整すべきかどうか、頭を悩ませることとなります。
これは、INFJにとっても悩みのタネですよね。
INFJは、興味のない人の顔と名前を一致させるのが苦手なんですから。
うそ…こんなことまで?押印付随業務
これが、ややこしいところなんですよ。
よくクライアントと揉めるところなんで、しっかりと契約内容を詰めた上で、契約書にハンコを押さなければなりません。
ましてや、これがクライアントに対するHODとしての、最初の押印になるわけですから、プロ押印士としての矜持が保たれるかどうかの重要な局面となります。
主な付随業務は、以下のとおりです。
書類返還業務
書類編綴業務
書類保管業務
ハンコ作成及び修繕業務
その他これらに類する業務
さて、1については先程も触れたとおりですが、やはり、クライアントとしては押印してもらったらちゃんと手元に欲しいですよね。まぁまず契約に盛り込まれますので心配はいりません。
2と3については、煩わしい書類の管理業務を丸投げするケースですね。これにより、見た目にはペーパーレス状態を演出できます。ただし、保管場所及び作業場所を提供する必要があるので、倉庫もしくは自社ビルなどを有していないとなかなか難しいところがあります。
HOD側も、1の業務よりはオプション的な扱いをしたいと考えているので、クライアント側は契約金額がやや上がってしまうことを念頭に交渉したほうがいいでしょう。
4については、まぁハンコを取り扱う業務ですね。大体のHODは、ハンコ屋と業務提携しているため、HODそのものは単なる窓口です。いわゆる手数料収入ってやつですね。大企業相手にこの契約がとれると、もうウハウハです。
そして5よ。
その他これらに類する業務。
これマジでやっかいです。
「印鑑押印士憲章」に記載されているのですが、これの解釈が明確でないため、HODを悩ませます。しっかり勉強しているクライアント相手だと、ここを言われるんですよね。
このせいで、「書類保管庫の掃除」「ハンコ入れの掃除」「金庫内の整理」「倉庫と併設しているキッチンや応接間の整理整頓」など、微妙な案件が舞い込んできます。
なので、母体の大きなHOD法人などは、完全アウトソーシングしています。
今のところ、大きなトラブルにはなっていないようで、訴訟件数も少なく、その多くは双方で和解するため、最高裁判例なども存在してない状態です。まさに無法地帯。
これから印鑑押印士を目指すかもという方には、このあたりの現状について、現役の押印士にお聞きになることをオススメします。
でも…やっぱり?職人の世界は厳しい
余談ですが、HOD達は大変な職人気質です。
一見誰でもできそうでありながら、その奥深さに魅了されたら最後、もう行くところまで行ってしまう世界なのです。
その厳しさゆえに、業界では、
「握り3年、押し8年、欠け割れ二度押し15年」
「素人万枚、プロ億枚」
(※練習してきた枚数の例え)
「象牙の持ち手が割れるまで」
(※初代押印士:印野判子氏の格言)
などと言われ、素人がその敷居を跨ぐことすら躊躇してしまう世界。
また、昨今のICT、DX、AIの進化なども相まって、慢性的な人材不足に悩まされているようです。
機械化するにもねぇ、高速自動化押印機器がまぁ高額なのよ。
5年でリース組むにも、その後の維持費がねぇ。
そうなると、やっぱ人の手になるよねぇ。
そして毎年のように、将来無くなる職業ランキングの順位が上昇しています(現在、スーパーのレジ打ちについで2位)。
そのような状況のせいで、ますます職人化してしまうという悪循環に陥っている業界の一つです。
また、業界屈指のHOD関連企業「印鑑押印士法人OIY」の代表である判野氏は、このような問いかけもされています。
「われわれはHODでありながらも、HODではないと考えています。なぜなら、ハンコを押すだけではないからです。うちは、押印(O)以外(I)もやります(Y)から」と。
できるだけ押印業務に時間を割きたいHODとしては、ある意味一番シビアで重要なところかもしれませんね。
すなわち?印鑑押印士による社会貢献
印鑑押印士の出現により、社会がよくなることは間違いありません。
一般サラリーマンは、全員バンザイです。
なぜなら、以下のメリットがあるからです。
押印や書類整理からの解放により、クリエイティブな仕事に集中できる。
クリエイティブな仕事が増えれば、より多様で豊かな社会となる。
押印士に対する高額報酬に疑問を抱く企業が多数現れ、押印業務そのものが縮小されていき、近い将来において、完全なるペーパーレス社会が訪れる。
我々、一般サラリーマンがHODに業務委託すればするほど、社会は良くなっていきます。
そうすれば、どんどん押印レスになり、社会全体の手作業が減って、朱肉を袖につけて妻に怒られることもないし、おウチにも早く帰れるし、働き方改革の一端を担うことだって可能です。
私は、押印業務の委託を強くオススメします!
知り合いの押印士にお願いして、宅配便の受領印だけでも、安くやってもらおうかな?
ようするに?noteの目次って大事!
目次をタテ読みしたら分かるようにしたのですが、これは妄想です。
いや、そんなことしなくても内容で分かるだろうと思っていたのですが、万が一、小学生とかが読んで、本気にしちゃってたらマジでその子に申し訳ないなと思ったので、ここに謝罪します。
タイトルで煽ってしまってごめんなさい。
押印士についてググってしまった人がいたらごめんなさい。この記事しかヒットしません。
もしも気付かぬまま、ここまで読んで、押印士を目指すような人がいたらごめんなさい。
押印士なんていう士業はありません。
ただ、空想に耽りながら、苛立ちまぎれに勢いで書いてしまった下書きを、あろうことか、公開してみました。
自分がやりたくない仕事でも、それを請け負ってくれる人達を想像することによって気を紛らわすという、新しいストレス解消のジャンルであり、アンガーマネジメントのニュータイプみたいなものだと思っていただければ幸いです(6秒待ってる間にnoteを開いて、5,000文字書くと怒りが治ります)。
おかげさまで、僕の押印に対する怒りは、無事に昇華されました。ありがとう、押印士。
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