ワカオカタクヤ

舗装路だけでなく、山や砂漠なんかを走っています。筆はあまり走りません。。。

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マガジン

  • ブータン日記

    ブータンの山岳地帯で、距離200km、最高標高5,400mのランニングレースを走ってきました。その体験記であり、2022年10月のブータンはこんな感じでしたという旅行記です。

  • メキシコノート

    メキシコシティ→チワワ→メキシコシティの日々と雑感

  • 共同売店をめぐる旅

最近の記事

道に迷った時にこそ問われる。それが真価

僕たちはなぜかゴールに向かっていた。 人生というものはスタートした瞬間から、誰しもがゴールに向かって歩んでいく。それは不変の真理であり、ランニングレースにおいても、スタートしたなら、ゴールに向かうのは至極当然のことだ。 しかし、スタートから間もないのに、ゴールに着きそうとなると、いかがなものだろう。レースとしてのドラマが生まれる前に、ゴールの瞬間を迎えそうだと、何かダメな気がするはずだ。 1週間前に走った愛媛のトレイルレース「鬼ヶ城ピークストレイル」で、僕はまさにダメな

    • 人は孤島ではない

      被災地に行った。 能登半島地震から2カ月が過ぎ、ようやく現地へ。ランナー仲間から紹介してもらい、一般社団法人TLAGの活動に加わり、2週にわたり家屋の片付け作業を手伝った。 現場となる輪島市まで、車に乗って2時間ほどで到着。地震が発生した直後は、1日がかりだったことを考えると、復旧は着実に進んでいる。早い、遅い、感じ方はそれぞれあるだろうが進んでいる。 道中では、記憶の中にある海岸線は姿を消し、見知らぬ風景が車窓を流れていった。海の広がっていた一帯は岩礁になり、砂浜から

      • 初めてに挑める喜び

        初マラソンに挑んできます。 経験者は口をそろえて、マラソンがいかにつらいものかを語ります。 マラソンには魔物がいる、あるいは30kmの壁がある、とにかくキツい、もうやりたくない。 そうした言葉におそれおののきながらも、ランナーを引き付けてやまないマラソンに僕もまた心惹かれていました。42.195kmを走りきった者にしか見えない景色があるはずだと。 とはいえ、なかなか踏ん切りがつかず、出場することに気後れしてきたのも確かです。憧れを憧れのまま終わらせない。そのためには自分

        • 独特すぎる空模様 石川の歩き方2・天気編

          石川県の話をしましょう。地震直後の今ではないかもしれませんが、ボランティアで能登に来る時のために、観光で訪れる時のために。その日に向けての予習です。 世界的に珍しい気象現象 冬の北陸では、世界的に見ても珍しい気象現象が起きます。それが冬季雷と呼ばれる雷です。 地元民からすると「ほかだと冬に雷が鳴らんの?」というくらいに日常的なもので、日常の1コマにすぎないため、特に意識することもありません。 夏の雷に比べて、とても強いのが特徴です。その轟音は空が割れるんじゃないかと思

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          石川県の歩き方

          石川県の話をしましょう。地震直後の今ではないかもしれませんが、ボランティアで能登に来る時のために、観光で訪れる時のために。その日に向けての予習です。 地元を離れて、石川県出身だと話すと、金沢を連想する方は多いのですが、正直なところ、どこにあるのか分からないという方もまれにいます。 うろ覚えだという方もいることでしょうから、まずは場所からご紹介。本州の真ん中くらいで、日本海側に突き出ているのが石川県です。その形はというと、左手親指の関節を曲げるとできあがり。とても分かりやす

          石川県の歩き方

          自分に負けた日

          ここ数日は精神的に打ちのめされていました。能登半島地震の発生から1週間が過ぎても、感情は千々に乱れたまま。能登に向かう途中で見かけた、ひび割れて亀裂の入ったアスファルトのようです。 あの日、被災していたのは僕だったのかもしれない。そんな思いが消えません。 元日に奥能登から加賀まで石川県をランニングで縦断しようと考えていたからです。結局は予定ができて、数日前に縦断は中止。金沢の実家で正月を過ごすことになりました。 今こうして日常を過ごせているのは運がよかっただけです。何も

          自分に負けた日

          腹は減り、思いはすれ違う

          それでも、その時、思いはひとつだった。 お互いの違いを認め合うなんて、馬鹿げている。そもそも、誰もが違っているのだ。「違いを認め合う」ということ自体が、他人と自分が同じだと考えているやつの戯言にすぎない。 誰もが違ってはいるが、ひとつになることはある。だから生きていることは面白い。 そんなことを実感したのは、週末の動画撮影での出来事だ。街中での撮影ではなく、フィールドが特殊。北海道の山の中である。アドベンチャーレース「ニセコ・エクスペディション」の撮影チームに加わり、30

          腹は減り、思いはすれ違う

          100マイルノート TGTトレーニング編

          TOKYO GRAND TRAIL(157km、獲得標高12,000m)を完走できた勢いに任せ、今年のトレーニングをぺろっと貼ってみます。これで週末ごとにロング走やらずに1日1〜3時間でも完走できるはず。たぶん。どうだろう。 トレーニング概略 昨夏からあまり走れてなかったので、今年は1月からトレーニングを開始した。ちなみに例年は1~2月は寒いのでサボりがち。やる気はあるのに、布団が気持ち良すぎるのがよくない。 サイクルは、2週間は強度高めで週5~7回、その後は1週間ダレ

          100マイルノート TGTトレーニング編

          「何もない」集落の暮らし

          自宅からコンビニまでは徒歩80分、登山道へは徒歩2分。福岡県の片隅にある小さな町の中でも、ことさら小さな集落に住んでいます。 里山の中腹、谷の一番どんづまり。ずっと住んでいる人からすると、「何もないよ」と言われる地域。あるのは坂道。平坦な道の方が少ないくらいで、ジョギングや犬の散歩さえもいいトレーニングになります。トレイルランニングのフィールドにはぴったりです。 かつては集落内に商店もあったそうですが、十数戸しかない集落で、現金を使えるのは1台の自販機だけ。あとは、澄んだ

          「何もない」集落の暮らし

          お湯に感じる幸せ ブータン日記4

          5日目には首都から北西部のガサ県に移動。スタート地点のある地域である。バスで朝出発して到着は夜と1日がかり。直線距離にすると200kmほどと、さほど離れていないのだが、さすがは山岳国家だ。平地の道はほとんどない。曲がりくねった峠道の連続で、道幅がとても狭い。大型バスで通行するだけでも難しいのに、路面が凹凸だらけである。車酔いでぐったりしている選手もちらほらいた。 滞在することになったのは、標高2,500mほどの山深い地域。貸し別荘地の並ぶ小さな村だった。ここでレースまでの4

          お湯に感じる幸せ ブータン日記4

          短くなる永遠

          永遠が短くなっている。 なにをバカなことを言っているのだと思われることだろう。しかし、事実なのだ。果てしなく続くから「永遠」のはずなのに、どういうことか短くなってきた。そうなってしまったら、もはや永遠ではないではないか。永久保証されていない永遠などあってたまるかと憤る向きもあるだろう。しかし、事実なのだ。一時的に短くなっているのか、未来永劫に短いままなのか、それは分からない。 そもそも、永遠が短くなっているからといって、時空の歪みが起きているわけではない。時間の流れがねじ

          走るメッセンジャー ブータン日記3

          不思議な旅は3日目にして最初の山場を迎える。 ブータンの前首相との夕食会に招かれ、首都ティンプーの街中から大型のバスで郊外へ。山あいにある小さな都市だ。首都といっても、背の高い建物は少なく、のどかな雰囲気がただよう。昼間は交通量が多いものの、日が暮れたこともあり、すぐに街外れに至った。 明かりがほとんどない駐車場にバスが停まった。車から降りると、暗がりの先にある建物に招かれる。ぼんやりとした明かりが灯っていた。 その中にあったのは、ブータンの伝統的な暮らしを伝える資料館。い

          走るメッセンジャー ブータン日記3

          四国のトレイルで食べ過ぎてきた話

          海を渡って四国のトレイルレースに行ってきました。4月最初の週末に愛媛・宇和島で開催された「鬼が城ピークストレイル」。レースはもちろんのこと、前後の観光まで充実。「来年のことを話すと鬼が笑う」などと言いますが、来年も行きたい大会でした。 道のりは遠いようで意外と近かったです。ほぼ大分との県境にある福岡県の自宅から別府まで車で1時間。港からは車ごと宇和島運輸フェリーに乗船。船室で昼寝している間にもう四国へ到着でした。 下船して八幡浜港の周辺をうろうろ。フェリー乗り場のすぐそば

          四国のトレイルで食べ過ぎてきた話

          祈ること。美しさ ブータン日記2

          シーツがやけにパリッとしていた。いつもよりも固い。 頬をシーツから離し、体を反転させる。仰向けになって、目の前の空間を見るともなく見つめた。暗くて視覚的な情報はほとんどない。分かるのは、早朝に目を覚ましたことくらいだ。 寝ぼけた頭がスッキリするまで、布団の中から動かずにぼんやりする。いつも通りの寝起きだ。 部屋が広いし、布団も違う。自宅ではないと気づいたのは意識がはっきりしてから。混乱しかけてから、ここはブータンなのだと思い出した。 初日は空港の近くにあるホテルに移動して、主

          祈ること。美しさ ブータン日記2

          不思議な旅の始まり ブータン日記1

          おおまかに下書きしたものをずっと放置していたら、いつの間にか半年が経っていたのであった。これはマズい。走ることと同じで、書くことも継続していかねば、どこにもたどり着けない。そんなわけで、ブータン王国探訪記&レースレポートをこつこつとアップしていく。 手を伸ばせば稜線に触れられそうだ。窓の外には山岳風景が続いている。まばらに生えた木々が目につくばかりで、斜面の大半は土が露出していた。畑として使われているようだった。 ぼんやり眺めている間にも飛行機は高度を下げ、山肌が近づいて

          不思議な旅の始まり ブータン日記1

          広島湾岸レットイットビー

          忘れられないことがひとつ増えました。 9月24日に開催された広島湾岸トレイル(108km、D+6,900m)を走ってきた時のことです。 午前6時のスタートに合わせて、余裕を持って会場入り。と思っていたのは、自分だけですでに開会式が始まっていました。定員1,000人の大きな大会だから、そういう式典もあるよなあ、などと妙なところで納得していました。 思い返すと、これくらいの規模感の大会って最後に出たのはいつだろう。というか、100kmのレースって最後に走ったのはいつなんだっけ

          広島湾岸レットイットビー