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「何もない」集落の暮らし
自宅からコンビニまでは徒歩80分、登山道へは徒歩2分。福岡県の片隅にある小さな町の中でも、ことさら小さな集落に住んでいます。
里山の中腹、谷の一番どんづまり。ずっと住んでいる人からすると、「何もないよ」と言われる地域。あるのは坂道。平坦な道の方が少ないくらいで、ジョギングや犬の散歩さえもいいトレーニングになります。トレイルランニングのフィールドにはぴったりです。
かつては集落内に商店もあったそうですが、十数戸しかない集落で、現金を使えるのは1台の自販機だけ。あとは、澄んだ空気も、小鳥のさえずりも、海の向こうに一望できる本州の山並みも、すべて無料です。
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外から来る人は少なく、のんびりとした時間が流れています。ジョギング中に暑くなり、服を脱いでガードレールに掛けたまま、3日間ほど置き忘れても、無事に残っているほどです。それどこか、走るのは僕くらいなので、届けてもらったり、連絡してもらったりすることも。
静かな集落の中でも、自宅周辺は特にひっそりしています。というのも、獣害よけのフェンスの外側に位置しているからです。ほかの家々は内側にあり、僕はシカたちと同じエリアに住んでいます。おかげで夜な夜な「ピーーー」という鳴き声を聞くことができます。
ちなみに住んでいる一軒家の家賃は、電気・ガス代込みで1万5000円、水道代5000円という驚きのお値段です。たまたま知り合ったおじさんと仲良くなって、持ち物件を借りることができました。
おじさんの家で夕飯を食べながら、「朝起きてあの女優が隣で寝ていたらどうする」「もうたまらんですね」などとバカな話をしていたのがよかったのかもしれません。
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コインの裏表
冬場は氷点下になり、ストーブを使わないと肌寒いのがやや難点ですが、快適に暮らせています。そう思っていましたが、人によってはなかなか大変な環境らしいです。
平野部は晴れているのに、雨が降ったり、吹雪なこともあります。集落へは1本道しかないので、自分の行動が丸わかりで、買い物に行くのも車がないと一苦労。日が暮れると真っ暗で、街中のようなにぎわいはありません。その代わりにカメムシやムカデ、ヤモリなど自然界のお友だちが至るところから、こんにちは。
住み慣れてしまうと気づきにくいですが、指摘されて納得します。いいなと思える長所も、他方から見ると欠点になることもあります。角度が変われば、見え方も変わる。人によって感じ方、考え方も違ってきます。
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当然のことです。どうせなら、いろんな角度から見て、いろんな楽しみ方ができるようになりたいものです。
「何もないよ」という集落も、コインの裏表のようなものです。裏側から見れば、まったく違った見え方になります。
床のすきまから植物が育ってきたり、カラスにウッドデッキを荒らされたり、カメムシを食べかけて吹き出したり、ムカデが降ってきたりと、小さな集落の日常には思いがけない出来事だらけ。驚かされたり、臭い思いをすることもありますが、「何もないよ」などということはなく、なんとも刺激的な暮らしです。