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【読書メモ】『闇の守り人』(著:上橋菜穂子)

日本文学振興会は9日、優れた文化活動に贈る第72回菊池寛賞に、作家の上橋菜穂子さん、脚本家の大石静さん、漫画家のちばてつやさんらを選んだと発表した。

出典:「菊池寛賞に作家の上橋菜穂子さん、映画監督の山崎貴さん、漫画家のちばてつやさんら」
(『産経新聞』2024年10月9日)

少し前に菊池寛賞が発表され、上橋菜穂子さんも受賞されたとの記事を見かけました。上橋さんというと、先ずは「精霊の守り人」シリーズを思い出すのですが、その中でも個人的に印象に残っているのが2作目となる『闇の守り人』となります。

キーワードとなるのは「闇」、そしてその「闇」は様々に点在するモノ、とでも言えましょうか。

物語の舞台となるのはバルサの故郷、25年前に養父ジグロと共に追われたカンバル王国。既に捨て去ったはずの故郷、そして、封じ込めたはずの過去の因縁への「想い」。

にも関わらず、「何か」に突き動かされるかのように故郷に舞い戻ることになります、過去逃げてきた道を辿って。その過去の道で出会うのは「闇の守り人」と呼ばれる存在、本書の題名ともなっている、その存在となります。

その「守り人」の正体はなかなかに衝撃でしたが上手い設定です、カンバルの根幹を成すという点でも。少しばかりムアコックの「紅衣の公子・コルム」に通じるものがあるのかな、なんて感じてみたりも。

どうも「闇」というと、なんとも暗い否定的なイメージが付きまといますが、その「闇」の中にも熱い想いが込められている、そんな物語です。

「闇」もまた生きている、息吹いている、との風にも。

ジグロが抱き続けた想い、バルサが抱き続けた想い、そして、それを取り巻く人々の想い。それらが全て重なり合いながら物語は紡がれていきます。そのうちに自分もジグロの「親心」を共有できるのだろうか、なんて沈思してしまう、そんな一冊です。

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