【読書メモ】『闇の守り人』(著:上橋菜穂子)
少し前に菊池寛賞が発表され、上橋菜穂子さんも受賞されたとの記事を見かけました。上橋さんというと、先ずは「精霊の守り人」シリーズを思い出すのですが、その中でも個人的に印象に残っているのが2作目となる『闇の守り人』となります。
キーワードとなるのは「闇」、そしてその「闇」は様々に点在するモノ、とでも言えましょうか。
物語の舞台となるのはバルサの故郷、25年前に養父ジグロと共に追われたカンバル王国。既に捨て去ったはずの故郷、そして、封じ込めたはずの過去の因縁への「想い」。
にも関わらず、「何か」に突き動かされるかのように故郷に舞い戻ることになります、過去逃げてきた道を辿って。その過去の道で出会うのは「闇の守り人」と呼ばれる存在、本書の題名ともなっている、その存在となります。
その「守り人」の正体はなかなかに衝撃でしたが上手い設定です、カンバルの根幹を成すという点でも。少しばかりムアコックの「紅衣の公子・コルム」に通じるものがあるのかな、なんて感じてみたりも。
どうも「闇」というと、なんとも暗い否定的なイメージが付きまといますが、その「闇」の中にも熱い想いが込められている、そんな物語です。
「闇」もまた生きている、息吹いている、との風にも。
ジグロが抱き続けた想い、バルサが抱き続けた想い、そして、それを取り巻く人々の想い。それらが全て重なり合いながら物語は紡がれていきます。そのうちに自分もジグロの「親心」を共有できるのだろうか、なんて沈思してしまう、そんな一冊です。