読書日記|0703-0709
0703
夜、子猫の鳴き声がする。一匹だけ逸れたらしい。目と鼻の先に来てくれたのに初動で失敗し、怖がらせてしまった。保護猫活動をしていると悔しい思いをよくする。お金だって7割実費なので保護するたびに飛んでいく。TNRは保護猫団体と合同なので安く済むけれど、安く済むといっても、メス猫7000円、オス猫5000円は実費で、余裕のない時は活動できない。捕まえるのだって簡単ではない。必ずといっていいほど負傷もする。里親探しも難航する。それでも手の届く範囲の猫たちだけでも幸せに暮らしてほしい。
0704
早朝4時、捕獲器設置。気になりすぎて眠れていない。約15分後に昨日の逸れ子猫を保護。よかった。戻ってきてくれてありがとう。あなたの良き家族を探すよ。人間は怖くないよ。
ほぼ寝ていないがしかし仕事の時間はやってくる。しかも集英社の日。山積みにされた呪術廻戦やマッシュルをみて泣きそうになる。氷の氷壁がきちんと入荷してきて、それを買う人がいて、嬉しい。寝ていない弊害で交感神経がバグり、心拍がはやくなったり、体温調節がうまくできない。眠い。すっぴんメガネ脳死状態で凌ぐ。
夕暮れ時に藤本徹さんの詩集『あまいへだたり』を読んだ。疲れきった脳に、体の隅々に、言葉ひとつずつが染み渡る。第一詩集とはまたちがう味わい。曖昧に浮遊していく詩は、全くといっていいほど掴みどころがなく、だからこそ自由で、ゆらゆらと揺られる心地良さに酔いしれる。淡い装丁があまりにもぴったり。
0705
町田その子さんの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を読みはじめる。はじまりから好き。連作短編で二篇まで読んだ。晴子がボコボコに殴りかえしたの、最高だった。かっこいい。
夜は呪0。五条夏油しょこのさしす組がどうしようもなく好きなので、待って………あ………あ………となってはすぐに心が死ぬ。死ぬとわかっているのに、彼らのアオハルに胸を躍らせる。明日からどうなってしまうのだろう。
0706
夜、二期がはじまった。OP、EDでぼろぼろ泣いた。五条夏油しょこナナミン灰原が私の妄想の100億倍仲良くて、1000億倍のアオハルを浴びた。これはもう致死量である。このキラキラ眩しいアオハルの先に離反が待っていて、その後にくるのが渋谷事変という地獄。そしてアニメをみながら本誌も読み進めていくという人間としての形を保っていることが難しいのでは、と思うような現実。……芥見下々は確実に我々を殺しにかかっているし、下々に人間の心はない。またEDをみて泣いた。『若人から青春を取り上げるなんて許されていないんだよ。何人たりともね。』と呪0で五条がいっていたけど、彼にとっての高専がいかにキラキラしていたのかをようやく理解する。そしてそれらを考えてまた泣いた。つまり呪術廻戦最高です。
0707
日記を書いていたら、操作を誤って消してしまった。もうおなじ言葉は書けない。言葉にするまえのものを辿って、手繰り寄せて、だけどすぐに見失って、浮遊したものは消えてなくなった。なくなったことに気づかぬまま、途方に暮れる。
怯えきっていた小春が遊んでくれるようになり、目の前でご飯を食べてくれるようになった。タケ、かぐ、ひめの母猫まるちゃんはご飯をいれにいく手元まで顔を近づけてくれるようになった。変わらない平穏と、変わりゆく愛しさ。そういったあたたかなものに触れて、囲まれて、私は健やかに生きている。
0708
朝から書店にマダムが刺繍の施された黄色のお洋服とスカーフを巻いた素敵な衣服を身につけて「急いで来ちゃった!」と笑顔でとてもチャーミングな来店。言葉遣いも、人への気遣いも、驕らない態度も、お上品な佇まいも、ほんとうに彼女のすべてが美しい。こんなふうに歳を重ねられたら、と思わずにはいられない。マダムに私は『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』をおすすめし、マダムは私に幸田文の本をすすめてくれた。小説は読むまでは勢いがいることや、エッセイの方が好きだという話、あとは小川洋子の『ことり』の話などをして、また読んだらすぐにLINEするね〜!とマダムは颯爽と帰っていった。ほんとうに40も歳が離れているのかと疑う。こんな素敵なひとと友人になれたことが嬉しくて、仕事が終わる最後までずっと上機嫌だった。
夜、甥っ子と本屋。昼間働いて、夜にまた本屋へ行くとは一体なに。甥っ子は『白鯨(上・下)』、私は『怠惰の美徳』と『深く、しっかり息をして』を買った。
0709
ひたすら眠い。甥っ子に数学を教える。二次関数でやっぱり躓くよねとおもう。遺伝かしら。理解してしまえばすぐにできるのだけど。眠い。眠くなる。
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を最後まで読んだ。守られた水槽のなかから飛び出して、そうして大人になって、川で溺れて、なにかにつかまり、海へでた。多分みんなそう。気づけば、傷だらけで、だけど必死で泳いでいる。頼りなく、醜く、それでも死なないように、じぶんを守りながら。どこまでもつづく海のなかで。
このような文章を書く作家さんを心底信用してるし、こういう文章に出会うために、私は本を読んでいる。あと連作短編ってほんとうにいい。すこしずつ繋がれていく物語ほどドキドキするものはない。
それでは、また。