統計を使った人の騙し方
若者の死因の1位が自殺である日本
↓ の記事で(学術的)エビデンスという言葉を取り上げましたが、その理由は、
その多くが統計を利用したものだからです。
統計というのは合法的に他人を騙すことができ、その便利さは無限大です。
見る方はデータの見方をきちんと理解してなくてはいけない。
今日はそんな話です。
やり玉に挙げるのはこちらの記事 ↓
このテーマは本のキャッチコピーなどに使われ、知っている人も多いかと思います。
これって本当にダメなことなんでしょうか?
記事は、若者の死因第一位が「自殺」である日本の異常さを訴える内容なのですが、使われてる ↓ 統計が「素人なめるな」レベルの稚拙さでした。
まず人が死ぬ理由って、
病気(老衰含む)、事故(犯罪含む)、自殺
のどれかと思いますが、
ここでは病気が細分化され、悪性新物質(ガン)、心疾患(心臓病)、脳血管疾患(脳梗塞)の3つに分かれています。
この表はその5種類でもって年齢別・死因ベスト3を発表してますが、
どれかしら1位になって当たり前ですよね?
この表の解釈は2通りあります。
もし2であれば、それは単に、
つまりまっとうな先進国だからこそ、自殺が1位になっている。
そういったサルでもツッコミを入れられるような理屈の穴をふさぐため、次に出てくる統計は?といえば当然、G7の国際比較。
数字は人口10万人当たりの死亡者数です。
これを見ると、
日本はG7最多で約18人、
G7平均値は約10人。
棒の長さを見ると日本が異常に見えますが、
数字が「人口10万人あたり」の死者数である以上、これは割合(%)のグラフなんです。
つまり若年層の自殺率は、
日本:0.018%
G7平均値:0.010%
差:0.008%。
→これほぼ誤差範囲ですよね?
割合グラフである以上、横軸は%目盛、かつ最大100%が普通ですが、
そうしたら棒が目視できないですよね?
これ横軸最大値は40人、たったの0.04%です。
グラフの形状を変えることで、嘘をつかず簡単に印象操作できます。
従って、この統計の正しい解釈は、
となります。
むしろ日本は事故死がG7中最少なのが凄いと思いますね。
諸外国と比べ、交通ルールみんな守ってるし、治安も抜群にいいです。ゲットーも貧民街も存在しない唯一の国じゃないですか?
それでも「日本の若者の死因第1位は自殺なんだぞ!」という人には、こう問い返してください。
「じゃあ、何が1位なら生きやすい国なんですか?」
アメリカの方が生きづらい
…というかアメリカ人の死にすぎが凄いですね。
原因は犯罪発生率の高さと、人種や宗教差別によりそれが事故として片付けられてしまう事のように思えます。
日本は、確かに息苦しい社会ではあります。
その理由は、コミュニティの結束が弱いことだと思います。
他のG7はキリスト教国なので、教会が地域住民の居場所や駆け込み寺としてあるていど機能しています。
また、LGBTやヴィーガンなどのマイノリティグループも多数存在します。
(ただしその背景は、弾圧が酷いから結束が強くなったというものですが。)
ですが、欧米の治安の悪さや、司法の恩恵を受けられる人が限定されていることの方がよっぽど問題だと思います。
所得格差による医療の恩恵についても同様です。
近年の円安と物価上昇は困ったものですが、物価上昇と賃金上昇を比較した場合、生活苦はむしろアメリカ人の方がひどいです。
つまり日本が特別なのではなく、どこの国にも様々な生きづらさがある、という事です。
悪用しないでください
簡単な例を使って、統計が嘘をつかずに人を騙すことを解説しましたが、ここで伝えたいのは、「数字を出す側には必ず意図がある」ということです。
賃金の上昇率など、統計を使って悲観的な主張をする人たちが、SNSにはたくさんいますが、そういうデータには必ず誘導したい方向ありきなので、立ち止まって深呼吸をし、よく考えてみてください。
きちんとした学術論文だって同じです。
専門用語を調べて細かく読解できたとしても、どこの誰が、どういった目的で、どこから資金を得て研究をしたのか、背景事情が分かっていないと、実は読む意味ありません。
(唯一の例外は数学の証明です。ただし歴史に残る重要論文でも理解できる人は世界に10人、とかよくありますが。)
また、種明かしをすれば、この記事も誘導したい方向に沿ってほんの少し文章を工夫していたりします。
興味がある方は突っ込みどころを探してみてください。
…そんなこと言っておいてアレですが、統計というのはたやすく人を誘導できるものなので、くれぐれも悪用しないようにしてください。
お願いします。