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[ALEXANDROS]の「挑発」、この爆風を乗りこなせるか

【[ALEXANDROS]/『KABUTO』】

まず、カップリング曲の"ハナウタ feat. 最果タヒ"について。

今まで全ての楽曲の作詞作曲、および編曲を自ら行ってきた[ALEXANDROS]だが、この曲の制作においては、初めて外部のクリエイター/プロデューサーを迎えている。

川上洋平の書いたメロディに言葉をのせたのは、現代詩の新たな可能性を追求する詩人/小説家・最果タヒ。(代表作の一つとして、池松壮亮主演で映画化された小説『夜空はいつでも最高密度の青空だ』がある。)

そして、編曲を手がけたのは、音楽プロデューサー・小林武史。

アレキ史上、最高級にメロディアスなこの曲は、石原さとみ出演の東京メトロ「Find my Tokyo.」のCMソングとして、既に僕たちの生活の一部となっている。

川上洋平はこれまでに、人々の心を掴んで離さない美しく壮大なバラードを何曲も書いてきたが、「呟くように」「囁くように」歌うことのできる等身大のバラードを、大型タイアップ曲として発表したのは今回が初めてだ。

《ひかりのなかに恋をしている/孤独はきっと、そういうもの》

声高らかに歌い上げる必要はない。まさに鼻唄のように、一人ひとりの日常にそっと溶け込む優しいメロディと言葉こそが、この楽曲の驚異的な浸透力の理由だと思う。

そして、小林武史プロデュースによって改めて証明されたのは、[ALEXANDROS]には、J-POPシーンのど真ん中に訴求する力があるということ。Mr.Childrenやback numberのように、国民的バンドとして大型タイアップを堂々と引き受けるその姿は、とっても頼もしい。

同じくCMタイアップ曲である3曲目の"Follow Me"も、アレキらしい毒や棘を帯びたロックナンバーでありながら、やはりどこまでもポップだ。

しかし、彼らがこのシングルの表題曲に選んだのは、このコマーシャルな2曲のどちらでもなかった。

"KABUTO"

この曲は、Aメロ、Bメロといった既存のフォーマットに則っておらず、サビすらもない。

では、この楽曲をかろうじで楽曲たらしめているものは何か。それはたった一つのリフだ。

表現すべきものの核だけを抉り取り、そのままの熱量で叩きつける。リスナーにとっては、爆風に飲み込まれるような、一瞬の試聴体験になるだろう。

「たった一発のリフで世界を変える」

全てのロックバンドが抱く/抱いた、そんな憧れや幻想に怯むことなく手を伸ばす。

それは、圧倒的にシンプルで、だからこそ健全なロックバンドの表現姿勢だ。

今の日本のメジャーシーンで、ここまで音楽的暴力性を剥き出しにした楽曲を、シングル表題曲としてリリースできるバンドは他にいない。

彼らがこの曲をドロップすることの意義は、現行の音楽シーンへの「提案」といった生易しいものではない。「挑発」だ。

シーンから求められるものにしっかりと答えながら、シーンそのものを覆していく。今の[ALEXANDROS]は、その両軸で加速し続けることのできる数少ないバンドの一つだと思う。


※本記事は、2018年5月24日に「tsuyopongram」に掲載された記事を転載したものです。

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松本 侃士
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