WANIMAを聴いた時の「エモい」という感情について考えてみた
【WANIMA/『Good Job!!』】
WANIMAの歌と演奏を聴いていると、いつも不思議な気持ちになる。
時には「エモい」の一言で言い表してしまいたくもなるが、僕たちの感情は、やはりそう単純なものでもない。
笑いながら、飛び跳ねながら、踊りながら、それでも涙が溢れてくるのは何故だろう。
たとえ、もう戻れないと知った過去が輝きを増したとしても、いつかそっと、前に向かって歩き出せるようになるのは何故だろう。
何度も再会を誓い合っても、どうしようもなく訪れた別れを、いつの日にか、思い出さなくなってしまうのは何故だろう。
そして、辛くて、苦しくて、今にも逃げ出してしまいそうなほど追い込まれたとしても、心の底から沸々と闘志がみなぎってくるのは、何故だろう。
WANIMAの音楽は、そんな僕たちが抱く全ての「何故」を優しく包み込んでくれる。
そして、いくつものラベルが貼られた複雑な感情を、彼らは爆音に変えて、力強く肯定してくれるのだ。
《どれだけ過去が辛くて暗くても 昨日よりも不安な明日が増えても/悩んだり泣いたりする今日も 進め君らしく 心踊る方》("ともに")
だからこそ、彼らが与えてくれる「エモい」という味わいは、果てしなく濃厚で、途方もなく奥深い。
もちろん、3人が国民的バンドになることができた理由は、他にもある。
KENTAが歌うメロディは、決して誰一人も置き去りにしない懐の深いもので、テンポを落としてゆっくり口ずさめば、そのまま「童謡」のように普遍的に響いてしまうほどだ。
FUJIとKO-SHINが要となって紡ぎ出すバンドアンサンブルは、全てのリスナーの汗と笑顔、そして涙に、時に激しく、時に優しく寄り添い続けてくれる。
そう、3人だからこそ伝えられる言葉とメロディ、鳴らせるバンドサウンドに、僕たちは今日も奮い立たされてしまう。
もちろん、数え切れないほど多くのリスナーの狂騒的な期待を、一身にして受け止めることは決して容易いことではないはずだ。
僕たちが日々抱く複雑な感情を、シンプルで真っ直ぐな音楽に結晶化させるために、彼らがどれだけの努力と苦労を重ね続けているのか。そう想像するだけで、言葉を失いかけてしまう。
今回の新曲"アゲイン"の中で、KENTAはこう叫ぶ。
《懐かしくて もう一度/焼き付いて離れないんだ/正しさだけじゃ見えない/理屈や理由ならいらない/曇った夜 抜け出すから》
《くたびれた顔に陽が射す/おいてゆく身体が覚えてる/そうさ まだこれからだ》
彼らがこうして、この先もずっと「ともに」歌える新しい楽曲を作ってくれたことが、僕は嬉しくて堪らない。
これからもWANIMAの音楽が、もっともっとたくさんの人に届いていって欲しいし、今回の新曲たちも、やはり届いていくべきスケール感と包容力を確かに兼ね備えていると思う。
その必然として、3人は今年も音楽シーンのトップランナーとして走り続けていくはずだ。
今年も、彼らの快進撃に期待したい。
※本記事は、2019年3月7日に「tsuyopongram」に掲載された記事を転載したものです。
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