垣花つや子(かきのはなつやこ)

かきのはなつやこの下書き置き場

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編集者 垣花つや子の仕事の一部

こんにちは、フリーランスの編集者・ライターの垣花つや子(かきのはな・つやこ)です。 これまで携わってきた記事をまとめてみました。どれもよい記事なので、よければのぞいていただけますと幸いです。 記事企画の立案・取材・編集

    • ある孫の日記 その14

      13時頃に祖母の家についた。卵焼きに味噌汁に魚に煮物にご飯、お昼を準備して待っててくれた。煮物は高野豆腐だけじゃなくてウィンナーまで入っていてわたし喜ぶ。ごはんをたべながら「どこそこの取材はどうだった?」「ああ、そこは延期で再度日程調整してるよ」とか「石破さんはいつ辞めることになるかね?」とか「(わたしの子の名前)は歩くの?」「もう走るよ」とかぽろぽろ喋る。先に食べ終わって、なんだか眠くて、畳の部屋で寝転ぶ、そして、どんよりな身体を起こして仕事を進める。今日はなんだか周囲との

      • ある孫の日記 その13

        「お茶を冷やす、お風呂上がり飲む、それがビールがわり、ノンアルコールお茶だよ」 ペットボトルに入れたお茶をそう説明してくれた祖母は、ビールが高いと言っていた。ノンアルコールお茶いい響き。お昼ご飯は、煮物と味噌汁と鮭と白米。 リビングの家具の配置、ベッドの位置が前回来たときから変わっている。時計が3つ置いてある、3つ。テーブルには、前に置いていった『ほんのちょっとの当事者』と『LIFE これからのこと』PDFを印刷したもの。 味噌汁の味がなんか濃くて、2種類くらい混ぜてる

        • ある孫の日記 その12

          父方の祖母の家に遊びに行くと、「次に(バス停名)にくるバスは⚪︎時⚪︎分だよ」とよく言っていた。そのことを思い出した。お小遣いとオレンジジュースをくれて庭にくるメジロの話を毎回していた。 そんなことを思い出したのは、母方の祖母の家に向かう途中。祖母の家から最寄りの駅までは25分くらい歩くし、坂道も急だし、日中歩くのはなかなかしんどい。のでバスで移動した。 約一カ月ぶり。リビングの様子がすこしだけ変わっている。低めのベッドが置いてある。エアコンがあって水分が取りやすいリビン

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        • ある孫の日記
          14本

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          ある孫の日記 その11

          記録を残すこと、ひらくことのルール、ここまでどうしてたっけ?ぼんやり考えていたらカメラを忘れた。取りに戻るか悩んだけれど、まあそのカメラで写真を撮ることが目的ではないし、撮りたくなったらスマホでも撮れるし、と思いそのまま向かう。 くらくら来そうな暑さのなか、祖母の家につく。窓の外から祖母がテレビを眺めている姿が見える。外から手を振って玄関の鍵をあけてもらう。 リビングはちょうどいい涼しさ、エアコンの温度は29°に設定、扇風機の組み合わせだった。お昼ごはんは今日も煮物、ウイ

          ある孫の日記 その10

          いつぶりだっけ?と記録を見返したら1ヶ月半以上も空いていた。それくらいぶりに祖母の暮らす家へ。 ついたら庭の手入れをしていた。剪定バサミのようなものをもって草木を刈っている。集中していてこちらには気づかない。たのしそうだったし、すぐに声かけなくていいかなと少し悩んでから声をかけた。 今日のお昼も煮物、いつも通り高野豆腐入り、豚肉に塩麹とかで下味をつけてるんだよと教えてくれる。 今日の服は部屋着じゃなくて外行きの服っぽくて、かわいかったので「その服おしゃれだね、午前中どっ

          ある孫の日記 その9

          日曜日遊びに行ってもいい?とメッセージを入れたら断られた。「〇〇で他の約束があるから又にしてください」とのこと。そのことがうれしかった。うれしかった理由も書けるけれど、なんだかうれしかったという余韻だけ残しておく。(2024年5月18日)

          ある孫の日記 その8

          今日は祖母がうちに来た。父、母、妹と共に。「新澤さんの本、ありがとう、おもしろかったって言っていいのかわからないけどおもしろかったし、登場した人たちの暮らしを知れてよかった(意訳)」と来てそうそう伝えくれた。『同じ月をみあげて ハーモニーで出会った人たち』を贈ったので、その感想。この本を祖母が読んで何を感じるのか知りたかったし、お喋りしてみたかったのでうれしい。 けど、今日の場では同時進行する会話も多かったし、祖母とわたしの会話のテンポは生まれづらい環境だったからそこでおし

          ある孫の日記 その7

          「高野豆腐の煮物があるからお昼はこちらで食べませんか?」 「⚪︎日か⚪︎日行ってもいい?」とこちらから連絡を入れてやりとりしていたら毎度お馴染み高野豆腐の誘惑。よろこんでのる。小雨が降っていたのであたらしいレインコートとトレッキングシューズを履いて祖母の家へ。なんだかここ1ヶ月半くらい身体がいつもより疲れやすく、きもちもどんより&ぴりぴり&しくしくの波があり、外出の背中を押すきっかけとしてあたらしいレインコートを着た。そんなに雨は降っていなくて早々と手で持つことになった。

          ある孫の日記 その6

          長年「楽老」と名のつく市営住宅に住んでいたことをふと思い出しながら、祖母の家に向かった。会うのは20日ぶり、家にいくのは約2ヶ月ぶり。もっと早く行きたかったけれど想定よりも長めに体調を崩していて空いてしまった。 最寄り駅から25分くらいかけて歩き祖母の家へ。急な角度の坂道があって、へろへろになりながら辿りついてお昼ご飯。ウィンナー、はんぺん、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、ふき、鶏肉など他にもいろんなものが入った煮物とさばの西京焼きと白米。 「煮物には高野豆腐もはいってる

          ある孫の日記 その5

          坂口恭平さん『自分の薬をつくる』を読んだ感想を祖母がぼそっとつぶやく。そうだね、と返事をするけれど、話は続かない。というよりは、別の出来事が起こって、これまでの話題がぱたんと閉じてしまう。 この日は、わたしの住む家に、祖母と父と母が来た。わたしにとっての子、父や母にとっての孫、祖母にとってのひ孫に会いにきた。なので、子になにやら動きがあると、そっちに関心が向く。一度閉じた話題を再開するにはページが重くて、そうはならない。途中から祖母はソファで寝ていた。 この日この場でこの

          ある孫の日記 その4

          低温でストレスが積み重なっていく日々だった。おそらくもうすぐ脱する。テンポよく駆け足の速度でしごとをするのが得意じゃない、というか苦手だ。心臓の音がどんどん速くなって、呼吸が浅くなって、視野が狭くなって、身体が硬くなって、思考が偏って、そわそわして、ハイになって、急にやる気が出て、ばたっと意欲を失う。繰り返し経験してきたこともあって、そうなりかけてたらまあ気づくし、意欲を失っても自分を責めることは無くなった。けれど駆け足でしごとをしている状態のときの自分の暮らしぶりは望んでい

          ある孫の日記 その3

          「寝坊したから13時頃に着くよ」「いいよー待ってるよ」 今日のお昼は、穴子、しじみの味噌汁、はんぺんや大根、トマト、ブロッコリーなどぶちこまれている煮物。あと水分多めの白米。 「おいしい?」祖母は、こちらがご飯を口に運ぶまえに聞いてくる。そして、こちらが「おいしい」と伝えると、とびきりの笑顔をこちらに向ける。そしてしばらくすると、「おいしい?」と聞いてくる、お茶を飲むたびに「おいしい?」と聞いてくる。穴子がおいしかったので、ごはんをおかわりしたら、大喜びしていた。 坂上

          ある孫の日記 その2

          「そこにお金を使う余裕がない、1冊2000円くらいするでしょう」 祖母が家にきた。私にとっての父と母と一緒に。栄養バランスを著しく欠いたお昼を一緒に食べた。先週祖母と食べたお昼と大違い。 昨日読み返していた土門蘭さんの『死ぬまで生きる日記』がテーブルに置いてあったので、「これ、いい本だよ」と手渡す。 「今読んでるの?」 「昨日読み返してた」 「読んでいいの?」 「うん」 ソファに座り、眼鏡を外し、すぐに読みはじめる。読みながら「健康な人は死にたいと思わないっていう人い

          ある孫の日記 その1

          「これ、美味しいね」 「ほんとに?よかった、うれしい」と満面の笑みを浮かべる祖母。祖母の家で一緒にお昼をたべた。今日は鍋、具材は、にんじん、たまねぎ、しいたけ、いとこんにゃく、ごぼう、豚肉、高野豆腐。 「(私の名前)は高野豆腐好きだもんね」。わたしが遊びにいくと必ず高野豆腐が入ったなにかしらの料理が出てくる。 「梅干しが入ったおにぎりいる?」「梅が苦手だからいらない」「そうか梅は嫌いなのか」「うん」「あたたかいお茶はいる?」「お茶はすき」「お茶おいしいよね」 そんなやり

          なぜペンネームを名乗るのか

          「垣花つや子」はペンネームだ。なぜペンネームを名乗るのか記す。この名前は、わたしにとって大切な人たちの名前をベースにつくった。その人たちは、すでに亡くなっている。ある人は事故死、ある人は自死だった。 自分自身に余裕がなく、なんとか働いていた時期に、大切な人の死が突然やってきた。後悔がたくさんあった。当時混乱してしばらく働けなくなったし、あのときこうしていれば、ああしていればというきもちが、ぐつぐつと沸き上がった。数年が経つ今でもふと揺らいでしまうことがある。 自死を選ばせ

          なぜペンネームを名乗るのか