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ある孫の日記 その1
「これ、美味しいね」
「ほんとに?よかった、うれしい」と満面の笑みを浮かべる祖母。祖母の家で一緒にお昼をたべた。今日は鍋、具材は、にんじん、たまねぎ、しいたけ、いとこんにゃく、ごぼう、豚肉、高野豆腐。
「(私の名前)は高野豆腐好きだもんね」。わたしが遊びにいくと必ず高野豆腐が入ったなにかしらの料理が出てくる。
「梅干しが入ったおにぎりいる?」「梅が苦手だからいらない」「そうか梅は嫌いなのか」「うん」「あたたかいお茶はいる?」「お茶はすき」「お茶おいしいよね」
そんなやりとりをしながら私は先にごはんを食べはじめる。祖母は、台所でお湯を沸かしたり、梅のおにぎりを準備したり、なにやら用意している。祖母がテーブルに戻ってくる頃には私のお腹は満たされている。
このあたりで、やっと、ほっとする。
祖母の家について、チャイムを押したとき応答がなかった。右耳に補聴器をつけており、言葉を少し粒立てて伝えないと聴き取ってもらえない。だから気づいていないのかと最初は思った。ところが「おばあちゃん」と呼んでも出てこない、玄関の鍵は空いていない、窓からリビングをのぞいてもいない。もしかしてなにかあったんじゃないか。過去にあった出来事をいくつか思い出してパニックになりそうな自分とトイレに行っててすぐ出れないだけだと言い聞かせる自分がいた。数十秒して祖母は玄関の鍵を開けにきた。おそらく別の部屋で洗濯物をほしていた。パニックになりかけたことを祖母に伝えたいとは思えなかったので、なにごともなかったかのようにお邪魔します、と言った。ああ、ほんと、よかった。
お昼を食べた後は、なぜかいつも置いてある甘いものたちをつまみながらお喋り。祖母がわたしの家にきたときに本棚をみて「貸して」と言われた本、信田さよ子さんと上間陽子さんの『言葉を失ったあとで』について。
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「すごくおもしろい、昔より内容は覚えられなくなっちゃったんだけど、文字を読んでいる瞬間はたのしい。沖縄の話もいろいろ考えちゃう」と祖母。
祖母にとってのパートナー、わたしにとっての祖父は沖縄の宮古島にルーツがある。亡くなって3年。もう3年。まだ3年。わたしも色々考えちゃうし、その一方で忘れちゃう。
あとは最近の地震の話、大相撲で連勝している力士が気になる話、祖母にとってのひ孫でわたしにとって子の話。ひ孫しか載っていない写真アルバムをつくって祖母にあげたので、一緒に眺め、かわいいねとお互いにつぶやき噛み締める。そのあと、パーマかけた?と聞かれたので、だいぶ前だけれど、そうだよと答えた。すると、「かわいいね」と言ってくれた。「でも、大人になって、かわいいって言われたくないか」と続けるので、わたしは「いくつになっても、かわいいって言われたいし、ちやほやされいです」と伝えてみた。「わたしも」と祖母も笑う。
夕方、暗くなる前に帰った。祖母は夕飯食べていけば?と何度か誘ってくれた。でも明日はしごとだし、自分の家でごはんが食べたかったから帰った。きっと夕飯も一緒に食べたらよろこんだと思う。自分にとってもいい時間になったと思う。でも帰った。
「せっかくいいカメラもってるから今年はもっと写真を撮ろうと思って」そう伝えて何枚か写真を撮った。そんな写真と記録をこれからたまに残したい。
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