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老父と娘の"ちょっといい時間"

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認知症の実父と娘の"ちょっといい時間"を綴ったエッセイ。介護の中には、幸せがいっぱいでした。
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#松本市

あの世からとどいた短冊

あの世からとどいた短冊

 父がデイサービスから短冊を持ち帰ったのは、8月に入ってすぐのことだった。

 松本市には、子どもの成長を願って七夕人形を飾り、「ほうとう」という名前の郷土食を食べる慣わしがある。「ほうとう」といえば、野菜たっぷりの鍋に平打ち麺を入れて味噌で煮込んだ山梨の郷土料理が有名だが、松本市のそれは、冷たい極太麺に、あんこ・きなこ・ごまをまぶした、いわば”うどんでつくったおはぎ”のことで、七夕の日にしか食べ

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明日死ぬなら刺身定食①

明日死ぬなら刺身定食①

今日は、父を連れて総合病院へ。

先月、4度目の脳梗塞を患ったばかりだというのに、退院して間もなく、今度は、ふと、風呂上がりの父の後ろ姿におかしな膨らみをみつけた。

スーパーでよく見かける、桃やみかんが入ったドーム型のゼリーみたいな形で、直径5cm、厚さ1cmほどの膨らみなのだが、かかりつけ医に暫く様子を見るように言われたのち、結局、総合病院へとなった。

診察は、柔らかく痛みもないことから問題

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父と「まんま」でランチ

父と「まんま」でランチ

 先週、老父を総合病院に連れて行った。検査と診察で長くかかると思っていたが、思いのほか早く終わったので、ランチに出かけることにした。
認知症生活は、穏やかで単調な毎日と、気持ちが沈む期間の繰り返し。折を見ては、父を連れだして刺激を与えている。

 私がその店に初めて行ったのは、2週間前のこと。友人に声をかけられ参加した、「震災支援ネットワーク・被災移住者交流イベント」の会場が”Kumi's L

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