築地書館

日本列島の自然の成り立ちや、身近な自然の驚異である人体、一輪の花の形態から数億年に及ぶ昆虫と植物の共進化に思いを馳せるガーデニングなど、生物学、生態学、地球科学、自然史、環境政策に関する書籍を1953年から出版する会社です。人間社会と自然の関わりを考える歴史書も。

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日本列島の自然の成り立ちや、身近な自然の驚異である人体、一輪の花の形態から数億年に及ぶ昆虫と植物の共進化に思いを馳せるガーデニングなど、生物学、生態学、地球科学、自然史、環境政策に関する書籍を1953年から出版する会社です。人間社会と自然の関わりを考える歴史書も。

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    小社刊行の書籍について。 目次やまえがき、あとがき等。

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    築地書館社員が語る、日常のあれこれ話です。(月1回予定)

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ネコ学―訳者あとがき

 巷には、猫に関する書籍があふれている。小説やエッセイを除いて、飼育に関係する実用書だけをとっても驚くほどの数である。そんななか、10年前に翻訳させていただいた『ネコ学入門』が、愛くるしい猫の写真も女子にウケそうなイラストもなく、ふてぶてしい表情で読者を睨みつける中年猫を表紙に冠しつつも売れ行き好調だったのには、正直なところ驚いた。  本書は、その『ネコ学入門』の原書、クレア・ベサントによる著書『How To Talk To Your Cat(別タイトル/ The Cat

    • ネコ学―目次

      はじめに 猫という種を尊重し、個々の猫を理解するために すべての動物のなかで最も個体差が大きい 人間とは違う生き物の世界を理解する楽しみ 1 猫の「エッセンス」 猫はどのようにして人間の生活の一部になったのか? イエネコに残る野生の特徴 猫はこの世界をどのように見ているのか?  視覚と聴覚/触覚/嗅覚と味覚/猫の動き 他の猫とのコミュニケーション  匂いの交換/ボディランゲージ  音を使ったコミュニケーション  (交尾の声と喧嘩の声/母猫と子猫の会話/成猫同士の声によるコミ

      • ネコ学―書影

        • 福田平八郎の跳躍力───没後50年雑感

          福田平八郎が晩年1966年に描いた「鯉」という作品が、「没後50年記念 福田平八郎×琳派」で展示されている(山種美術館にて12月8日まで開催)。 濃いグレー色のぼてっとした鯉がじっと動かずにいる。静物画のようだ。中にあんこが詰まっているのではないかと思われるほど躍動感がない。鱗の1枚1枚を欠けることなしに描いた出世作の「鯉」や、花に向かう小さなハチの羽音が聞こえてきそうな移ろう季節の花ばなや虫たちを細密に描いた写実性と装飾性を兼ね備えた作品を手がけてきた同じ作家の作品とは思

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        記事

          企画展「やまなし土偶探訪」(釈迦堂遺跡博物館)雑感

          中央高速道を東京方面から走り、笹子トンネルを抜け、勝沼インターチェンジを過ぎるとすぐに釈迦堂パーキングエリアがある。ここで車を停めて、重いスライド式の鉄の扉を開けると、パーキングエリアに隣接した釈迦堂遺跡博物館だ。中央道は渋滞を避けて早朝や深夜に走ることが多いのだが、昼間に走るときのお楽しみが、この博物館だ。 2024年12月23日まで開催している企画展「やまなし土偶探訪」はお薦めだ。山梨県各地で出土した普段はあまりお目にかかることが少ない土偶たち200面が展示されている。

          企画展「やまなし土偶探訪」(釈迦堂遺跡博物館)雑感

          『カレー移民の謎』雑感

          ステンレス製の大きな皿タ─リーからはみ出すくらい大ぶりの、ほんのり甘いナン。席に着くとまず冷蔵庫から出てくる、オレンジ色のドレッシングがかかったキャベツとニンジンのサラダ。 辛さが選べるメインのカレーは、野菜カレー、チキンカレー、マトンカレー、バターチキンカレーなどから選ぶと、小さなステンレス製のお椀によそられて、タ─リーにのってくる。 付け合わせのライスはジャポニカ米のこともあれば、細長い香り米のこともある。 食後に温かいチャイ(シナモン、カルダモン、クローブ、生姜など

          『カレー移民の謎』雑感

          森のきのこを食卓へ―編集部より

          きのこ研究歴40年!  日本全国の山野を駆け巡っておいしい野生きのこを採集し、 培養して森のきのこの多様さを活かした栽培法を探求。 「きのこづくりの楽しさを手軽に体験してもらいたい」という思いから、 大がかりな設備を必要とする従来の栽培法からの転換を提案します。 「里山」と呼ばれるエリアを多く有する日本ですが、 都会への資本集中にともなってその豊かな機能性は発揮されなくなり、 現在では多くの里山が人の手から離れて荒廃しています。 そんな里山を、多様なきのこを育てる場所とし

          森のきのこを食卓へ―編集部より

          森のきのこを食卓へ―はじめに

          (前略) 効率的ではないきのこや生産技術の存在意義 物づくりにおいて、いかに、同一商品を大量かつ安定的に低コストで生産するか、つまりいかに効率的に生産するかは最も重要な課題の一つである。しかし、もともと森林内に存在するきのこは多様なものである。常に環境が変化する自然界では、一つのきのこでも、さまざまな個性があった方が、種として生き残るのに有利なのだ。効率というたった一つの基準できのこを評価するのはもったいない。「効率的生産条件に適さないきのこや技術は存在してはいけないのか」

          森のきのこを食卓へ―はじめに

          森のきのこを食卓へ―目次

          はじめに─森林の多様性をきのこ生産に取り入れる 効率的ではないきのこや生産技術の存在意義/森のきのこを栽培で再生する喜び 第1章 きのこ業界の流れを変える 1 消えゆく中小規模生産者 生産量の推移/きのこ生産者および関連産業の現状/支援機関 2 きのこ生産で地域を元気に 多様なきのこ栽培技術の開発/里山再生への貢献/地域を循環する経済への貢献 第2章 多様な栽培法を探る─森林からの遺伝資源探索と栽培試験から 1 ナメコ ナメコとは/ナメコ野生株の空調施設栽培による特性評価

          森のきのこを食卓へ―目次

          森のきのこを食卓へ―書影

          森のきのこを食卓へ―書影

          いえに戻って、最期まで。―おわりに

          「在宅ケア」にかかわる本を書き始めてから、本書が10冊目になる。今回は本人を送り出す病院の「患者支援センター」の責任者から、在宅で訪問を行う医療・介護の専門職まで、医療と介護の現場で「いえに戻って、最期まで」を応援する13人のプロに登場いただいた。 「入院はその人のQOL(生活の質)を段階的に下げていく」と、訪問診療医の佐々木淳さんが本書でも語っているが、大腿骨骨折、脳梗塞、心筋梗塞、誤嚥性肺炎、がんなどで入院し、退院した本人の状態を見て、「このまま自宅で介護できるのか」「

          いえに戻って、最期まで。―おわりに

          いえに戻って、最期まで。―はじめに

           2017年に母、2020年に父、そして、今年2024年の5月には20年間「主介護者」を続けてきた認知症の友人を見送った。  母92歳、父96歳、友人89歳。看取りの場所は三者三様だった。母は自宅、父は医療療養施設、友人は特別養護老人ホーム。母と友人については「できるだけやった」という納得感がある。しかし、自宅で転倒し、念のためにと検査入院したのがきっかけで、いえに戻ることができなくなってしまった父については、さまざまな後悔が残った。  当時95歳だった父は、要支援2から

          いえに戻って、最期まで。―はじめに

          いえに戻って、最期まで。―目次

          はじめに 第1章 ひとり暮らしの父が倒れた! 鍵屋まで呼んでの大騒動 はじめは検査のための入院だった…… 検査で発覚した膀胱がん肥大と「硬膜下水腫」 2週間程度で退院のはずが…… 「寝かされきり」から「寝たきり」になった父 要介護1から要介護5に 施設を選択肢に入れてみたものの 「地域包括ケア病棟」への転院 患者家族になった医師の体験 医療には「待つケア」がない 施設への入居を阻む夜の「痰吸引」 気がついたときには、すべてが後手に 病院は生活の場ではない 「生活」に戻れない

          いえに戻って、最期まで。―目次

          いえに戻って、最期まで。―書影

          いえに戻って、最期まで。―書影

          互恵で栄える生物界―訳者あとがき

          本書は、クリスティン・オールソンによる『Sweet in Tooth and Claw - Stories of Generosity and Cooperation in the Natural World』を邦訳したもので、邦題『互恵で栄える生物界―利己主義と競争の進化論を超えて』が伝える通り、私たち人間もその一員であるこの地球上の生物は、互いに助け合いながら栄えてきたことを教えてくれる1冊だ。 「私たちは、周囲の自然との複雑で創造的で活気に満ちた関係に支えられ、自然の

          互恵で栄える生物界―訳者あとがき

          互恵で栄える生物界―はじめに

          もう何年も前になるが、私はオハイオ州クリーブランドのマレーヒルに近い画廊で、数人の男性と多くの女性が集まったグループに加わったことがある。その日の夕方、ジャーナリング(訳注/頭に浮かんだ考えや思いを言葉にして書き出すこと)をしてそれぞれが感想を述べながら、楽しくおしゃべりをする会が予定されていたからだ。 私はもともと引っ込み思案だし、当時は今よりもっとその傾向が強く、どうして出席することになったのかはまったく思い出せない。その集まりの詳しいことも、ほとんど覚えていない─レゴ

          互恵で栄える生物界―はじめに