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雨のない梅雨の一日 紫陽花は今年も咲いている 言葉巧みに誘い出された僕は 数日ぶりに外の景…
生き方を見失ったように、君は呆然と……膝を抱えたまま転がっている 時計の秒針がコツコツと…
じっとしていると何も感じないのに 少し動くとちくちくする ちくちくすると、ざわざわする ざ…
まるで本を読んでいるかのように どこか遠く、他人の経験を語るように 君は記憶を辿りながら、…
さようなら そう呟いて消えていく君の夢を何度見ただろう 君の指に絡めた自分の指をするりと…
狂気を孕んだ瞳は 零れ落ちそうなほどの涙を湛えている 辛いときほど 悲しいときほど ずっと…
やわらかな朝を迎えるために今日の棘を抜いた 朝を迎えると、棘を抜いた傷が疼いている 昨日が今日の続きにあることは知っていたけれど 君も僕も過去が折り重なって ほつれた糸を引っ張ると どこかが痛い 誰かの笑顔の裏側を想像してみる 瞳の奥に隠された負の感情を探る 僕の持つ棘に、ひつつずつ布を被せていく その度に、僕は自分で傷ついていく 手当をしてくれるという君の手を まっすぐ握れずに 僕は俯いたまま今日を終える 本当は嬉しいのだけれど
君と僕との出会いは晩秋。纏う空気の冷たさが際立つ日だった。 そのときすでに日は沈み、空は…
君がする約束のひとつひとつが 僕の未来を象って 色付けてゆく 僕が未来に存在することが 許…
水蜜桃に寄せた君の唇から 零れそうな果汁 泣き腫らした君の眼はまだ少し充血していて 鼻先も…
どれだけ砂をかき集めても、指の隙間から零れ落ちるように、君と繋いだ指先は、きつく結んでも…
少しずつ、君の記憶が遠のいて行く 時間とは、優しいのか、それとも残酷なのか 残像には、優…
外は柔らかく穏やかな日のような気がしている 窓から入る光は明るく、刺さるような暑さもない …
閉じこもった世界に、君はいる 古いアパートは銀色のアルミサッシの窓枠で、君はその窓を半分開けてぼんやりと外を眺めている 左手には単行本を、人差し指を栞代わりに挟んで持っている 僕は畳に座って珈琲を飲みながら君を観察する 君は無口な方で、笑うときも大きく笑うことはない その理由を僕は聞かない 君の前髪が少し湿ってきたように見える 世界は一つではないよね そう呟いてから、君は手に持った単行本に再び目を落とした 人の数だけの世界の広がり方をしている 同じものを見てい