
「歌うように」演奏するためには(その2)
Twitter(現X)で少し前に『「もっと歌って!」と言われても歌って聴かせることは難しい』といった話が盛り上がっているのを目にしました。
そちらで盛り上がっていることに触れる気はありませんが、僕自身が「歌う」とは何か、そうした演奏をしてもらうためにレッスンでどんなことを実践しているか、どのように考えるかを昨日書きました。そちらもぜひご覧ください。
物事を考える際には核になる部分に注目することが大切で、そして真逆な状態を考えてみると本質が見えてくるというお話を昨日の記事では書きました。
「歌うように」とは何か
前回の記事の最後に「歌うように」とは何か考えた際、「機械的ではない演奏」というひとつの結論が見えました。言い換えれば「人間らしい演奏」です。
では人間らしいとは何でしょう。機械になくて人間にあるものは、心、感情、不正確性、不確実性などでしょうか。それに加えてもうひとつ音楽をする上でとても大切だと思っているものが「重力の影響を受けている」という点です。ボールを上に投げれば落ちてくるし、重いものは持ち上げるのが大変で、それを離せばドスンと落ちるし、坂道は登るのが大変だし、自転車で下り坂はブレーキかけないと怖いです。重力の影響は常に受けています。
もちろん機械だって何だって地球上にいれば何でも重力やら引力やらの影響を受けていますが、人間はこれによって動作や感じ方が様々に変化し、そうしたものは音楽との関係も深いのです。これはまた後述します。
「音楽」とは何か
ではもうひとつ大切な「音楽」とは何か、考えてみます。
これは定義の話ではなく、人間がどういった際に「音楽だ」と感じるのか、という話です。個人的には「一定のリズム」を感じた際、人間は音楽らしさを感じるのではないか、と思っています。
一定のテンポは均一な音価の連続(ビート)です。その均一なビートに周期性を与えると「拍子」になります。例えば4つずつのグループに分ければ4拍子といった具合です。
4拍子の構造
では4拍子は具体的にどのように一周しているのでしょうか。指揮の動きをイメージするとわかりやすいかと思います。

まず1拍目は高いところから落ちてきた衝撃です。ということはその前に落とすための準備もしくはその前の小節の4拍目がどんな高さからどんな重さで落ちてきたかで1拍目のパワーは変わります。
3拍目も1拍目ほどではないにしろ落下するので、同じように2拍目をどのくらい持ち上げたか、どんな勢いで持ち上がったかによって強さが変わります(1拍目が強ければ2拍目のバウンドも大きく、強くなります)。
ですので2拍目と4拍目は持ち上げる(持ち上がる)力を必要とした拍(弱拍、アップビート)であり、1,3拍目はその結果落ちてきた衝撃で生まれた拍(強拍、ダウンビート)であるとわかります。
落ちては弾んで持ち上げてを繰り返すことで4拍が循環し、次の小節、次の小節と流れることになります。
そしてこの循環をグループ化したものを「フレーズ」と呼びます。2小節とか4小節とか8小節を1フレーズと捉えることが一般的には多いように感じます。
さて、これで「歌うように」を表現するための材料はある程度揃いました。
次の記事では具体的にこれらの材料+αを使って解説したいと思います。
荻原明(おぎわらあきら)
いいなと思ったら応援しよう!
