経営者(社長)のための2024年問題 #2
トラックドライバーの2024年問題。他の記事では取り上げない問題の本質を分かりやすく解説します。
1.1か月284時間以内だからと安心してはいけない。
1か月の拘束時間が、293時間から284時間に短縮されました。ここで注意が必要です。
これまでは
$${293×12=3,516}$$
と、1か月の拘束時間が293時間を超えていなければ、1年間の拘束時間の3,516時間を超えることはなく大丈夫、と分かりやすかったのですが
今回の改正では、
$${284×12=3,408 >3,400 >3,300}$$
となり、「毎月の拘束時間が284時間を超えていないから大丈夫」とはいかなくなりました。つまり労使協定を結んでいる場合でも年間8時間、結んでいない場合は年間108時間も超過してしまいます。
2.拘束時間と休息時間は表裏の関係にある。
拘束時間は、1日原則13時間、最大16時間から、「1日13時間以内、上限15時間」に変わりました。
休息時間は、継続8時間以上から、「継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない」に変わりました。
このふたつを比べると、これまでの拘束時間最大16時間と休息時間8時間を足すと24時間、改正された基準では、13時間以内と11時間以上を足すと24時間となっています。
現行も含めて拘束時間と休息時間の和は、1日24時間の長さになっており、表と裏の関係にあることが分かります。
3.24時間の連続した休息を与えただけでは休みにならない。
1日は24時間ですから、「連続した24時間の休息を与えたのだからその日は休日」だろうと考えると、失敗してしまいます。
1日の仕事の開始時間から24時間後がその日の終わりです。これは「1日」に対する考え方が、0時から24時までの暦日性ではなく、仕事を開始した時間を0時と考える24時間制を採用しているからです。
一方で休息時間は「継続9時間を下回ってはならない」とあります。これは先ほど説明した1日の拘束時間が「上限15時間以内」と表裏の関係にあります。
話を戻しますと、仕事を終えた後、必ず9時間以上の休息を与えて初めてその日が終了したことになります。休日はその後から始まる連続した24時間のことを言います。
つまり、
$${9+24=33}$$
最低でも33時間の連続した休息を与えて初めて「休日を与えた」と言うことになります。注意が必要です。
4.「ダブルカウント」に要注意
例を挙げてみます。(下の図参照)
月曜日の20時に始業したこのドライバーの1日は、次の日の20時までです。
ここで次の日、積み込みのために早めに17時に出社するよう指示しました。
2日目の17時から20時までは、「1日目が終わらない内の拘束時間であり、また2日目の拘束時間でもある」という奇妙な現象が起きます。
これを「ダブルカウント」と言います。とても重要なポイントです。
1日目は20時出社の13時間の拘束時間と考えていたら、
$${13+3=16}$$
で、「拘束時間上限15時間以内」を上回ってしまいました。
2日目の始業は20時ではなく、実際に2日目の仕事を始めた17時です。
ここの所、良く理解してください。
因みに、「1週間当たりの拘束時間」を集計するときは、この「ダブルカウント」という考え方は用いず、単純に拘束時間の合計で求めます。
5.週の合間に休日を取らせる場合の注意点
週の合間の水曜日に「有休を取らせて欲しい」という申し出がありました。先ほどの連続した33時間以上の休息を与えることを念頭に、配車を組んでみましょう。(下の図参照)
月曜日と火曜日の拘束時間はそれぞれ13時間と14時間、木曜日と金曜日も同様です。いずれも上限の15時間には達していません。また、週2回までが目安とされた14時間超もありません。
有休休暇の水曜日も、連続した34時間の休息が取れており、合格です。
このように24時間制で考えることが非常に重要で、カレンダー通りに配車を組むと失敗してしまいます。
では今日のお話はここまでとします。
皆さん、ご安全に!