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短編集

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ジャンルごったまぜの短編集です。
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#恋愛小説

ひらり、ひらりと舞うそれは

ひらり、ひらりと舞うそれは

「追いかけてくるんです。今もほら、聞こえませんか?」

そう言う彼女の声があまりにも真剣で、何も聞こえなかったけれど笑い飛ばせず耳を澄ますふりをした。私のそうした態度はあまり上手いものではなかったと思うのに、彼女はその色素の薄い瞳を期待にきらめかせている。二重のくっきりした瞳は全体的に存在感の薄い彼女の中で、そこだけ強く存在を主張していた。
(どうにも弱ったね……)
耳を傾けたところで、私には何も

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個体と個体の話

個体と個体の話

ここに一つの個体がある。

彼がそう話し始めたので、これは長くなるなと私はお茶をいれにかかった。
片手間に聞いているのが見るからにわかっただろうに、彼は気にした様子もなく台所の椅子を引いてお茶が入るのを待つ体勢だ。
ようは、長くなることは確定しているということだろう。
かといって、ここで話を聞かないと途端にむくれる。
ゆえに付き合うことは必死なので、やはり私はお茶をいれるしかなかった。

「どうぞ

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ぼくはなににもなれない

きみが横で泣いている時、うまい慰めの言葉が見つけられない。
大丈夫だよ、とか、ぼくがいるよ、とか。
言っても気休めにしかならない気がするし、きみが泣いている本当の理由を知らないから怖くて言い出せない。
だって、もしきみが泣いている理由がぼくだったら、声をかけることすらいけないことのような気がしてしまうから。

だから、今日もぼくは何も言えない。
そんなぼくを見かねて、きみはたまに顔を上げる。

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あめあめ ふれふれ

あめあめ ふれふれ

──雨が、降っている。

夕方から降りだした雨は、深夜になってもぽつぽつと立ち去るのを嫌がるように降り続いていた。
アパートの壁は薄く、寝室で横になっているにも関わらず雨音がよく聞こえる。目を閉じると空の下で眠っているような錯覚を覚えるほど、はっきりと。さすが築20年は伊達じゃない。

雨にはあまりいい思い出がない。
雨は、いつだって私の大切なものを奪っていく。
幼稚園の時の遠足、小学生の時の登山

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甘さひかえめ

「なぁ~こういうの、やめない?」
「やめません」
「けどさ~そろそろいいんじゃないかなって思っちゃったりしちゃったりするわけで……はい、すみませんでした」

ひと睨みするだけでピシッと敬礼の体勢を取った幼馴染み兼恋人に満足げに笑みを向けると、またすぐに溜息が返される。
もちろん、それはきれいに無視して彼の前に大きなホールケーキ(それも今が旬のイチゴがたっぷり!)を置いた。
ロウソクはどうしますかと

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