今日のご飯は、夢の外│ショートショート
その日、彼が『定食屋ササミ』に行くと、カウンターには背筋の綺麗な青年が座っていた。
「こんなにゆっくり、食事をしたの、久しぶりです。」
青年が言った。
「食べ物を残すのも、久しぶりです。」
笑顔は、はにかんでいて幼さない。
「それなら、良かったです。」
ササミさんが、にっこりと笑う。
気づくと彼は、ササミさんに渡そうと思って先ほどそこらで詰んだ花を、青年に差し出していた。
何故だか、渡したくなったのだ。
けれど、青年は首を横に振った。
「手ぶらで、行きたいんです。」
青年は空