森と真実|ショートショート
ある人は言う。
「あの家には魔女がいる」
ある人は言う。
「普通の家族だよ」
真実は時に、見る人によって変わってしまう。
さて、貴方の目にはどんな真実が映るだろうか。
深い森の一軒家に、両親と娘が暮らしていた。
娘は森中を駆け回って遊んでいたが、怪我をして帰ってきた事はない。
ある日、母親が熱を出した。
娘は驚いて家を飛び出し、森の奥の大木に向かった。
「お母さんが病気になっちゃった!」
半べそをかいて娘が言うと、木はゆっくりとしな垂れて彼女を優しく抱いた。
「大丈夫、お薬あげる」
振り返ると一羽の兎が、葉っぱを咥えている。
娘がそれを母親に飲ませると、たちまち良くなった。
母親がぽつんと呟く。
「あの子、何か不思議ね」
父親は笑って返す。
「そうか?普通だよ」
ザワザワザワ。
森の木々達が騒めいて、2人の話はそこで途切れる。
そうして今日も真実は隠れてしまうのだ。
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