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”本当の発明者”は誰?

 子どものころに学習漫画等が好きだった筆者は、発明や発見に関する本もよく読んでいました。そのため、「白熱電球の発明者はエジソン」といった知識があります。

 しかし、歴史上重要な発明品は、厳密な意味での発明者が知られていないこともあります。

 先日出版された書籍には、一般に知られた「発明者」と本来の発明者が異なるケースも紹介されています。


蒸気機関の発明者はワット?

 実用的な蒸気機関ができたのは18世紀ごろのことです。
 鉱山では、地下水がわき出たときにくみ上げる作業が必要です。イギリスの技術者ニューコメンは、蒸気によってピストンを上下させ、地下水をくみ出す装置を開発しました。しかし、この機関は効率が悪く、大量の石炭を必要とするという欠点がありました。

 やはりイギリスの技術者だったワットは、ニューコメン機関の修理を通じて、改良の可能性に気づきました。上下運動を回転運動にすることで、エネルギーの無駄をなくすことに成功したのです。

蒸気機関車の発明者はスティーブンソン?

 蒸気機関が発明されると、鉄道に革命が起こりました。初めて蒸気機関を鉄道に導入したのは、イギリスのトレヴィシックです。彼は強力な高圧蒸気機関を開発し、1804年には人間を運ぶことができる世界初の蒸気機関車を発明しました。

 しかし、当時の鉄の材質では蒸気機関の重さに耐えられず、レールが壊れてしまうという欠点がありました。トレヴィシックはさまざまな事業に手を出しては失敗し、寂しく亡くなりました。

 蒸気機関車の改良に取り組み、実用化に成功したのがスティーブンソンです。1825年、彼の開発した蒸気機関車がストックトン―ダーリントン間の約40キロを走り、世界初の旅客鉄道となりました。レールには、より丈夫な材質の鉄が採用されました。

種痘の開発者はジェンナー?

 ジェンナー以前からあった天然痘予防法は、回復した天然痘患者から取ったうみを接種する「人痘接種」でした。この方法は、18世紀にオスマン帝国からヨーロッパに伝わります。
 人痘接種には効果がありましたが、欠点もありました。場合によっては、接種を受けた人が重症化し、死亡するリスクがあったためです。

 より安全な方法を開発したのが、イギリスの医師ジェンナーでした。彼は、牛の病気である牛痘にかかった人は、天然痘にならないという言い伝えを耳にします。検証のため、牛痘にかかった人に生じたうみを8歳の少年に接種します。すると、彼は天然痘にかかっても軽症ですみました。
 ジェンナーの開発した牛痘接種法は、大勢の人を天然痘から救うことになります。

白熱電球の発明者はエジソン?

 白熱電球の発明者はエジソンとされますが、正確には1860年にイギリスのジョセフ・スワンによって発明されました。真空のガラス球に、炭化した紙のフィラメントを入れます。フィラメントに電流を通すと発光するという仕組みです。彼は試行錯誤の末、40時間連続で発光させることに成功しました。

 スワンと電球の開発を争っていたエジソンは、さらなる改良に取り組みます。エジソンは数百時間の寿命を目指し、世界中からあらゆる素材を集めてフィラメントに使う実験を行いました。最終的に、日本の京都産の竹でできたフィラメントは、1200時間以上の発光を達成しました。

 以上見てきたように、実際の発明者よりも、改良し普及に貢献した人物の方が歴史に名を遺しています。近年の世界史教科書などでは、正確を期すため「蒸気機関の”改良者”はワット」といった表記をすることが増えているようです。

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