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たった1枚の紙に自分を詰め込むデザインの話

自分の名刺のデザインを新しくしました!

新しい環境に来てから,自分を表現するものを着実にアップデートしてはいましたが,ここ数年いたビジネス畑から半年以上遠のいた生活をしていたので名刺を使う機会が格段と減ってしまいました.最近,大きいイベントの企画をしたり,自分の研究を公開したりで多くの人とお話しする機会が増えたので,新しい名刺を作って心機一転しようと思った次第です.

表面,researchのスペルをミスったまま印刷してしまったのも一興.
裏面,お気に入りのポストカードをリスペクトして「魔法をかける!」の文字をあしらった.

さて,このデザインに込めた想いとか色々書きたいことがたくさんあるので名刺解説特集回です!!

印刷のこと

名刺作りは「印刷方法」を決めることから始まります.今回は「リソグラフ(孔版印刷)」を採用しました.シルクスクリーンプリントの方を聞いたことある方なら多いのではないでしょうか.

リソグラフ印刷とは、「デジタル孔版印刷 ※」 という印刷技法で、インクの乗った感じが版画で刷ったような雰囲気を生む、味わいのある仕上がりになるのが特徴の印刷です。
※「デジタル孔版印刷」とはシルクスクリーンやガリ版などと同じ技術を利用したデジタル印刷で、スクリーン状の版に微細な孔(あな)を開け、そこからインクを用紙に押し出す印刷方法です。

リソグラフ印刷とは

印刷所は「レトロ印刷」様.リソグラフ印刷に特化していて,支持体や色などがレトロでとてもかわいいので利用しています.

リソグラフ印刷に特徴的な「ズレる」・「かすれる」・「ムラになる」・「混色する」という不完全だけど温もりを感じるような質感がとても愛おしく,アナログな手法ならではの味が出ているところがとても素敵なんです!

手に取れて質量を感じられる,アナログだからこその不完全さが残る感じが大好きな私にとって,リソグラフ印刷は最高の印刷プロセスです.

特に,印刷された媒体が大好きな私には,印刷方法から考えることも重要な表現の探索の一種なのです.

デザインのこと

名刺のデザインになります.

表面,肩書きと名前,連絡先というシンプルな情報を載せてます.
裏面.何かメッセージを書こうと,TOPで買ったお気に入りのポストカードをリスペクトして「魔法をかける!」にしました.なんか可愛いくて魔法をかけられそうですよね.

和文フォントは「リュウミン」を,欧文フォントには「Cochin」を使い,名前の洗練された現代の日本っぽいシンプルなものを目指した反面,欧文フォントは丸みのあるセリフ体にすることで,欧文の割合が多くなる文字情報にあたたかい印象を与えるデザインにしています.

表面を向けて相手に渡すため,一般的なレイアウトと文字情報を採用しました.紙は白色,インクは濃紺.インクを黒にしなかったのは「ちょっと普通からずれているよ」ということを暗示するためです.普通が分かった上で,ちょっとずらす.このニュアンスを伝えるために,あえて濃紺にしました.

一方,裏面は相手がひっくり返さないと見れません.そのため,ひっくり返してみた時に「私らしさ」が感じられたらいいかなと思って考えました.表向きはしっかりしているように見えても,中身は決してそうではありません.知的好奇心のままに,好きなことだけを考えているような.私の持つバイタリティとパワフルさと明るさとを全部詰め込んで,かつシンプルに伝える必要がありました.

東京都写真美術館で購入したポストカードでお気に入りのものがあります.水色の箔押しで「魔法をかける!」と真っ白のカードに書かれているものです.一目で気に入ったそのポストカードに,私の好きな世界観と,勢いと,言い表せないパワーと,本当にそうなってしまいそうな,まるで魔法のようなその一言に全てが詰まっていると思いました.

私の名刺の裏にも,ラムネ色のインクで「魔法をかける!」とあしらいました.紙の色はグレー.表裏で違う印象をわかりやすく持たせるために,表裏で違う色の紙を採用しました.

最後に角丸にし,優しさとあたたかさを込めて完成したのが,今回の名刺です.

愛に溢れてエモーショナルな人生を送っている最近のこと

新しい環境に移ってから,私は随分と変わったと思います.誰かの人生に影響を与えたかった去年とは違い,今は自分の好きなことにどれだけ集中できるかを考えるようになりました.しかも,スタートアップ特有の熱量からアカデミアの独特な感じへシフトし,今はもうすっかり馴染んできました.

去年までは,自分の経験してきたことから生まれる唯一無二な発想や思考で,どれだけ世界に衝撃を与えられるかを,行動量と成果を根拠に腕試しするという感じでした.今は,私の好きと自然法則との間を埋めているような感じで,世界を変えようというよりは,自分の好きなことに対していかに科学と作家性という根拠を武器に世に知らしめていくかというアプローチで世界を切り開いています.

文字だけだと同じこと言ってるように聞こえるかもしれませんが,私の感覚的には全然違くて,言語化って難しいなぁと思いつつ,これも上手く伝えられるように,日々自分と向き合っていく必要があるんだなと思っています.

こんなことをしているおかげで,自分は何が好きで,どんなことに興味があって,今後どんな人になりたいのかを,ちょっと自信を持って言えるようになった気がしています.

自分の好きなことに対する直感をちゃんと根拠にできるようになって,「漠然としてるけど信じてみよう」という「ちょっとすごいこと」ができるようになりました.

だから,より確かな根拠を持ってデザインすることができるようになった気がしています.今までは,このテイストが好きだから.で終わっていたけど,こういう理由で,こんな考えを持っていて,だからこの部分がこう好きで.という感じにより具体的に好きなことを語れるようになった気がします.説明上手になったという感じでしょうかね.

問題解決じゃないデザインだから,これはアートかもしれないけど,それにちゃんと根拠を持って取り組んでいるならちゃんとデザインな気がします.

私はこの自分の好きに対して貪欲に過ごせてる今を「愛に溢れてエモーショナルな人生」と言って,楽しい日々を送っています.

名刺一つだけど,たった1枚の紙に自分を詰め込むデザインをしてみると,自分らしさとか自分の好きなこととかをちゃんと考えられる機会になるかもね.

最後まで読んでくださりありがとうございました,また書きます.

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