とんび

コークハイが好きです。

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最近の記事

嘘つきとモンブラン

「じゃあ、手をあげた方がいいの?」  昨日、ささいなことから彼女と喧嘩してしまった。彼女が、私にモンブランを食べたと濡れ衣を着せたのが発端だった。 「ねえ。私のモンブラン食べたでしょ。」  彼女が、開けた冷蔵庫の扉越しに私に問いかける。2人で暮らし始めて3ヶ月、狭いワンルーム。 「食べてないよ。ないの?」  僕は彼女を一瞥して答えた後、すぐにテレビへと視線を戻した。 「ないの。昨日買ってずっと楽しみにしてたのに。アンジェリーナのモンブラン!」  彼女が語気を強めながら答え

    • 恋慕

       数日前、同僚の男をひとり殺めてしまった。 キッカケは何でもない恋の鞘当てだった。  僕はその男に所謂恋の相談というのをしていた。僕が好意を寄せていた相手が僕たち二人の共通の知り合いだったのだ。彼は親身に相談に乗ってくれたし、僕も心底信用していた。こんな事になるはずではなかったのだ。彼があんなことを言わなければ。  僕らが初めて出会ったのは会社の新人研修だった。お互い地方出身で、東京にある今の会社へ就職する為に上京してきたばかりで、知り合いもいなかった僕らは、すぐに意気投合し

      • 遺書

        愛とは何でしょう。  何でしょう。何だろう。という疑問は私の人生の中で最も多く問われて来たものであります。 振り返られる程長くもない私のこのくだらない短い人生について少し思い返してみるだけで、どこぞの学習百科事典が如く、多くのなぜなにで溢れていることがわかります。  私は昔から、多くの常識や法律に疑問を持ってきました。答えのない問題というのは、答えがないがために私が考えたことが答えとなりうるのです。それがまるで自分の世界を創っているような感覚に浸れ、何より楽しかったのです。ご

        • 彼女のブラックコーヒーと真っ白なミルク

          やっと言えたぞ。 ついに言ってやったぞ。 市ヶ谷駅近くの純喫茶で僕は彼女を前にひとり昂っていた。 音量の調節がうまくいっていないジャズとうるさいほどに高なった僕の心音とが綺麗な不協和音を描いて僕の鼓膜を叩いていた。 「別れたいなんてそんなこと突然言われても。」 彼女は手に持っていたコーヒーをソーサーに戻して、困惑した様子で言った。 店内には、僕らとゴシップ雑誌を広げた初老のおじさんひとりだけだった。 「ごめんよ。でも、君とは合わないなとずっと思っていたんだ。これは恋愛的なこと

          勇敢な彼女

          「ねぇ。今日はゴリラのおしりでも見に行かない?私、なんだか暖かい陽だまりの下ゴリラのお尻をのんびり眺めたい気分なの。ほら、BLTでも摘みながら。」 起きてきた彼女が白い木目調の扉を開けたと思えば、そんなことを言いながらリビングに入ってきた。彼女の提案はいつだって突然で、脈絡なんてものは存在しなかった。 「ゴリラのお尻?夢にでも出てきたの?」 飲んでいたコーヒーをテーブルに置いて僕は答える。 「ううん。そういうわけじゃないの。ただ目が覚めたらそんな気分になってたってだけ。あなた

          勇敢な彼女

          ヒト殺しのセレナーデ①

          僕の学科にそれはとびきり可愛い女の子がおりました。 整形にでも失敗したかのようなつぶらで綺麗な瞳。筋の通った鼻。見るもの全てを引き込むような唇。そしてこの世の何よりも柔らかそうなその頬は特に私の気を引きました。ただ世間一般で見ましたたらいささかそういった評価は誤りと言わざるを得ませんでした。学科内外で僕以外からの下馬評があまり良くなかったのです。けれども、そのことが一層僕を虜にさせました。僕だけが彼女の魅力を分かっているんだ。誰にもその価値が見出されていないんだ。彼女は僕だけ

          ヒト殺しのセレナーデ①

          サキ②

          今の君たちは真っ白なキャンバスです。 学校の先生という生き物は、僕らをよく真っ白なキャンバスに例えたがる。 僕たちの人生はまだ何色にも塗られていない真っ白な粗布である、と僕らが生きてきた今までの人生など全くお構いなしに白色であることを押し付けてくる。 昔からそういった先生の有難いお話というのが僕はどうしても苦手だった。あれが好きな学生など恐らくこの世にはいないだろうけど形骸化された説話にはいつも苦痛を強いられ、ゴミ収集車の後ろを走っているかのような不快感を感じさせられた。

          サユリ①

          若い頃は唐突に訪れる自死への憧憬も恐らく大人になればなくなるものだとばかり思っていた。丁度大人になれば虫が触れなくなってしまう様に、大人になれば様々なことが一度に訪れてそんなことに気を取られることが段々と減っていって、気がついたら触れられなくなるのだと甘く考えていた。だが、そんなことはなかった。所謂一流の大学の門をくぐり大手と呼ばれる会社で馬車馬のように働いたってゲリラ豪雨につままれた様なその憧れは一切無くならなかった。ただその核心はしっかりと残したまま出来事がするすると周り

          サキ①

          おっとっと。 私はファミレスに行くと、いつもドリンクバーでグラスいっぱいにジュースを入れる。ケースに整頓されたグラスをひとつ優しく取り上げて、まるで初恋のあの子の瞳のように透明なグラスを綺麗なオレンジ色に染め上げたら、溢れそうになるグラスを右に左に、丁寧に丁寧に席まで運ぶ。側から見たら、その姿は正に油断大敵そのものなんだろうな。何だか偉い王様の家来になった気分だ。そんなことを考えながら私は足元をかけていく子供を避けて席へと向かう。飲み物を零してしまったら一大事だ。なぜなら、ま

          踊れ陰キャ男子

          コンビニの自動ドアが開く度、有線から流れてくる3月9日が断片的に僕の耳に届く。 抜けるような青空を仰ぎながら、僕は息を吹き出す。 お店に入っていく客を横目に、僕は現実を吹き出していく。 吸い込む前には汚れていた煙も、一度僕の肺を通して仕舞えば、それは一様の美しさと愛着を持って、世界の一部となる。 勇気を振り絞って、3年前まで働いていたコンビニに来てみたところで、この僕が店長に話を切りだせる訳もなく、行き場を失った勇気はこうやって店の前でショッポの煙として処理する他ない。でも

          踊れ陰キャ男子

          勉強が出来る陽キャに勝つ方法

          日曜日は街にカップルが溢れるからあまり好きじゃない。 そんなこと前々からわかりきっていたのだから、出かける日をずらせば良かったと後悔する。 だけどもう遅い。既に敵襲を許した後にそんなことを考えようとも、丸腰の僕にはもうどうにも出来ない。 本屋へと向かうエレベーターの中、綺麗な髪をした、いい匂いを漂わせる女が、早見沙織のような声でもって、彼氏と熱力学の話をしている。 エントロピーがどうのこうの。マクスウェルの悪魔があーだこーだ。 僕は許せなかった。 美人が勉強なんかするな。彼

          勉強が出来る陽キャに勝つ方法

          ジンクスと留年と

          僕はジンクスというのを信じているタチで、中学、大学と受験の時は、使わなくともいつも決まってhi-uni 4Bを持って行っていた。それに、大切なことがある日は左足から家を出た。小学生の頃、テストで良い成績が取れた時に偶々そうしていたのだ。 だから空が青く、雲が黒い、今日みたいな日には軽い筋トレをする。そして、スーパーで買ってきた安いステーキ肉をコーラと一緒に胃に放り込んで、オナニーする。そうして僕の体に、よい精子を出しやすい日というのを覚え込ませておく。ジンクスは自分から進んで

          ジンクスと留年と

          拝啓 とんでも侍のあなたへ

          ステーキガストのステーキはステーキと言えますか。ステーキの中の野沢雅子がペェナップルの入った酢豚は酢豚じゃねぇぞ〜!と怒ってはいませんか。南国の陽にあてられた元気な子供達はそこにいますか。 最近は肌寒い日が増えてきました。幼い頃から病弱だったあなたです。風邪などはひいていませんでしょうか。心配です。便りがないのは良い便りだといいますが、今日食べたラーメンが美味しかっただけでも良いので連絡をくれるとそれだけで嬉しいです。 ラブアンドピースしてますか。実は留年してました。などはあ

          拝啓 とんでも侍のあなたへ

          人生をよりよく生きるために死ぬまでにやりたい100のこと

          ・街中のペッパーくんをぶん殴ってまわり、人間誰しもがもつヒトとしての強さを己の強さと思い込むことでアイデンティティの確立を図る ・ナスカの地上絵を全て消して代わりにうんこを描いておく ・嫌いな上司の家に街中のピザ屋を駆使してマルゲリータ100人前送りつける ・天秤座をひたすらバカにし続ける占いをananに載せる ・ライオンキング上演中に突然早稲田の校歌を唄って世界に稲門会の強さを思い知らせる ・イヤなやつの顔にモンブラン叩きつける ・仲良さそうなカップルにハーゲン

          人生をよりよく生きるために死ぬまでにやりたい100のこと

          再受験を考えるJKユキコの衝動

          私は今都内の私立大学に通う大学3年生です。 私は今他人から見たらとても簡単な、けれども私から見たらとても難解な悩みに頭をもたげています。 というのも、以前私は美大志望のどこにでもいる平々凡々な浪人生でした。 他学部で多浪というと医学部ぐらいで、他の学部の人の目には二浪は珍しく映るかもしれません。 けれども、美大で浪人というのはあまり珍しくない上、二浪なんていうのはザラで、私が通っていた予備校には7浪や8浪なんて猛者もいました。 そういった環境でしたから、勿論私は真面目に勉

          再受験を考えるJKユキコの衝動

          某掲示板の「〜な件」がnoteだと「〜な話」となって少し上品な感じがするという話

          サイコロでも転がすんか 小生初めてnoteに画像を載せました🥳🥳🥳 やったーー!!!🤩🤩🤩🤩 こんなことをしている間に刻一刻とレポートの締め切りが迫っています。 このままだとコルビュジェに56されます。 助けて任意のお助けマン!!!!

          某掲示板の「〜な件」がnoteだと「〜な話」となって少し上品な感じがするという話