彼女のブラックコーヒーと真っ白なミルク
やっと言えたぞ。
ついに言ってやったぞ。
市ヶ谷駅近くの純喫茶で僕は彼女を前にひとり昂っていた。
音量の調節がうまくいっていないジャズとうるさいほどに高なった僕の心音とが綺麗な不協和音を描いて僕の鼓膜を叩いていた。
「別れたいなんてそんなこと突然言われても。」
彼女は手に持っていたコーヒーをソーサーに戻して、困惑した様子で言った。
店内には、僕らとゴシップ雑誌を広げた初老のおじさんひとりだけだった。
「ごめんよ。でも、君とは合わないなとずっと思っていたんだ。これは恋愛的なこと