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朝食のあと、ひとり屋上に上がると、北北西に富士山が見えた。病室の冷房温度はそれほど低く…
妻を見送り、部屋に戻ると、無人の病室でカーテンが風に揺れていた。廊下から「風呂だよ」と…
「何それ」 夜、モリオのベッドのサイドテーブルに数十冊のマンガが積んであった。表紙は…
「見舞いに来た人に、もう来なくていいって言うのって、どんなとき」 幽霊より嫌なものを…
妻の誕生日を忘れていたことを二日前になって気づく。プレゼントは退院後に渡すとしても、花…
深夜に病院を抜け出してどこかへドライブに行こうと言い出したのは浅田さんだった。いかにも…
三階担当の夜勤が寺池だということが、夜七時の検温で判明した。寺池は見周りの際、カーテンを開けて患者の顔を確認しない。らしい。 「それじゃあさ、十一時過ぎたら、ひとりずつトイレのすぐ横の階段を降りて、職員玄関を出たら大沢君の車に集合ね」 夕食後のトランプがお開きになった際、念を押すように二瓶さんが言った。 「車の鍵を持ってる大沢君が最初に部屋を出るんだよ。もし見つかっても、トイレどこでしたっけ、とか言ってごまかすんだよ」 深夜の見廻りは消灯時、十一時、深夜二時
目的地だった稲毛の海はまったく人気がなく、風にゴミが舞い閑散としていた。黒い砂浜に黒い…
急いでトイレに向かうと、すりガラスの向こうに浅田さんのサンダル履きと、向き合うようにし…
「病院って年寄りばっかりすね」 屋上で洗濯物を干していると、若い男が話しかけてきた。 …
病棟を出ると、屋上から見た場所に、まだ彼女たちはいた。見舞いに来ていたメガネの子は集団…
打ちひしがれて屋上に戻る。 一時間では洗濯物も乾くはずがない。しかし空を見ずにはいら…
彼女の姿が見えなくなると、まだどこかで電話しているモリオを呼んだ。 「友達になったん…