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「明日の記憶」
広告代理店の部長職50歳男性、佐伯。
若年性アルツハイマーと診断された佐伯の一人称スタイルで描かれている。
難病の経過と共に波打つ心情。
妻との関係、職場での振る舞い、残された命との向き合い方。
物語の冒頭から、すっと入り込んでしまったのは、広告制作に携わってきた僕のキャリア、年齢も近いし仕事の場面やスタッフとのやりとりがリアルに浮かんできたからということがある。
読み進めるほどに息苦しさは増し、斜に構える余地もなく真っ直ぐ感情移入してしまった。
そしてラストシーンは見事。
余韻。
良い小説に出会った。
読み終わって数日後に映画も観た。
息苦しさは映画も同じ。
良い映画だったけど、いつもは、原作は原作、映画は映画と思ってそれぞれ楽しむけど、これに関しては映画を見て、より原作の素晴らしさが際立った。
主演は渡辺謙。
原作に惹かれた渡辺が、作家の荻原浩に映画化を熱望する手紙を送ったいうエピソードは納得。
そうなんだろうなと思った。
思い入れている分なのかどうか、ちょっとそこが原作から遠のいてしまった理由かもしれないとも思った。
あえて「まず原作から」と勧めたい。