エナジードリンクは逆効果…眠気を吹き飛ばし、本当に脳を活発にする食材の3大要素
食後の眠気を吹き飛ばし、集中するには
血糖値の急激な上昇を防ぐことが重要!
■昼食後にやってくる“睡魔”の根本原因
「満腹になると、頭がぼーっとして眠くなる」
とても困りますよね。
しかし、そんな困った現象を解決する方法があることが、最新の脳科学研究からわかってきました。
それが「低GI食」です。
子どもの頃、学校の先生から「眠くなるのは胃に血液が集まって、脳に栄養がいかないからだ」と説明されたことをよく覚えています。
当時はなるほどと思っていましたが、実は血液が問題なのではなく、脳のエネルギー不足と脳内物質に原因があるということが最新の研究でわかってきました。
■食事後の眠気は「血糖値スパイク」のせい
脳がエネルギーとして直接利用できるのは、炭水化物の中に含まれる糖質です。糖質は、胃や腸の消化管で分解・吸収され、ブドウ糖として血液に流れ込みます。
それをエネルギー源として、脳は集中力、記憶力、実行機能、認知力、セルフコントロール力などを発揮しています。
ただこのブドウ糖、やみくもに多く摂ればいいというわけでもありません。精密機械以上に精密な人間の体は、そう単純ではないのです。
通常、ブドウ糖が入ってくると、すい臓がインスリンというホルモンを分泌して、細胞に糖を取り込むよう司令を出します。それにより一時的に高くなったブドウ糖の濃度(血糖値)が元に戻ります。
しかし、大量のブドウ糖が一気に流れ込むと、すい臓が「間に合わない!」と慌てて、インスリンを大量に放出してしまいます。すると、過剰なインスリンの働きによって、本来脳に回す分のブドウ糖まで吸収され、脳がエネルギー不足を起こすのです。
この現象を、「血糖値スパイク」といいます。「スパイク」というのは鋭く尖ったという意味で、シューズスパイクの先端のように、血糖値が急上昇して急降下する様子を表しています。
そして、日本での調査によると、居眠りをした学生は居眠りしていない学生と比べ、食後の血糖値の変動が激しかったという報告があります。逆に、変動が少なかった学生は居眠りが少なかったことが報告されています。
つまり、血糖値スパイクを防ぎながら糖をとれば、眠くならず集中できるのです。
■脳に効率よく栄養を届けてくれる食材とは
では、ランチ後に血糖値スパイクを起こさないようにするにはどうすればいいのか。それは、ランチで「低GI食」を摂ることです。
GIとは、グリセミック・インデックスの略で、食品に含まれている糖質がどれだけ血糖値を上げるかを、ブドウ糖を100として相対的に表した数値です。
前述したように、脳をしっかり働かせるには、糖というエネルギーが必要です。しかし、急激に血糖値を上げると血糖値スパイクが起きてしまう。
そこで、低GI食が力を発揮します。一時期ダイエットで話題になった低GI食ですが、糖質が摂れて血糖値の上昇は緩やかという特徴があるのです。まさに、「脳に最適な食事」です。
低GI食かを見極めるポイントは3つ。
①甘すぎるものは要注意
②炭水化物は白より黒い色の食べ物
③食物繊維が多いこと
です。
低GIの食品は、意外と身近に多くあります。例えば、肉や魚、乳製品などは総じて低GIです。食物繊維が豊富で糖質が少ない緑黄色野菜や、りんごやグレープフルーツも低GI。さらに、炭水化物でも蕎麦やライ麦パン、玄米などは低GI食になります。
実際にスウェーデンのランド大学が行った49~71歳を対象とした研究では、低GIのパンを食べると75~225分後の認知テストのスコアが上がったと報告されています。
フランス・ナンシー大学のリサーチでも、若い成人が低GI食を朝食に摂ると、150~210分後に記憶力が改善されることなども報告されています。
集中したい日は低GIを意識したランチにする。それだけで、午後の脳の働きが変わります。
私もこのことを知ってから、午後に大切な仕事があるときは低GIを意識し、昼食での糖質の摂りすぎに気をつけるようになりました。
おかげで今は午後になっても一日中、集中力を切らさず仕事ができています。
■エナジードリンクは短時間では効果的だけど…
昼食のタイミングだけでなく、集中したいときの前に低GIの「間食」を摂るのも効果的です。
手軽に取り入れられておすすめなのが、「高カカオチョコ」。高カカオチョコとは、一般的にカカオ成分が70%以上のチョコレートのことを指します。
シドニー大学がまとめたレポートによると、カカオ成分86%の高カカオチョコのGI値は18。これは、ミルクチョコレートの39に対し半分以下の値です。
つい手が伸びてしまいがちなお菓子と比べると、ポテトチップスに対し3分の1以下、せんべいに対しては5分の1以下の低さでもあります。
さらに、高カカオチョコに含まれるカカオポリフェノールには、脳を活発にするBDNFというタンパク質を増やす性質があることがわかっています。
高カカオチョコとあわせて、ナッツを摂ることもおすすめです。ナッツは低GI食品な上、やる気の素となるドーパミンやノルアドレナリンというホルモンをつくるのに欠かせない「チロシン」というアミノ酸が豊富に含まれているのです。チロシンは、ナッツの中でもアーモンドやピーナッツ、カシューナッツに多く含まれています。
最近では、高カカオのアーモンドチョコなどもあります。最強の組み合わせといっていいでしょう。
ちなみに、脳を覚醒させるイメージがあるエナジードリンクには、カフェインだけでなく甘味料も多く含まれているため、急激に血糖値が上がるおそれがあります。カフェインの作用が持続する時間は、敏感な人で15分ほど、一般の人で60分ほどと言われています。
その効果が切れたあと血糖値スパイクにより一気に集中力が落ちることも考えられ、長時間、脳を使う場合には向かないという面もあるのです。
■満腹が眠気を誘う…だから「腹八分目」がベスト
ただし、低GI食だからといって、満腹になるまで食べていいというわけではないので、食べすぎには注意してください。
それは、「オレキシン」という脳内物質が大きく関わってきます。この物質は、食欲を司っているだけでなく、脳に覚醒作用を引き起こす神経伝達物質でもあります。
満腹状態になると、脳内でこのオレキシンが減少します。すると、集中力や記憶力なども低下し、眠くなってしまいます。低GI食でも腹八分に収めておくのが、安全策と言えるのではないでしょうか。
食後の眠気は、1日のパフォーマンスにかかわる問題です。さらに、仕事には一瞬の集中力だけでなく長時間の集中が求められる場面も多いでしょう。
今回ご紹介した「低GI食」をランチや間食に取り入れて、上手に脳を働かせましょう。
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