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VTuberから考える知的財産権 ~商標編~

カバー株式会社の知財戦略の全体像を前回の記事で記載しました。

もう少し、個々の知的財産権に踏み込んで議論しようと思います。

今回は、商標を題材にします。

商標とは、名前やロゴ(図形)の権利です。
よくブランド戦略とかで使うのは、この「商標」になります。

商標権を取られると、同じ名前・ロゴでビジネス(商品・サービスの提供)が出来なくなります。

具体的に、カバー株式会社は、どういう商標を取っているか?ですが。
このようになります。

特許庁の商標検索結果(カバー社)

文字で商標を取得しているのが分かります。
また、私は、宝鐘マリン(通称、マリン船長)さんの歌をよく聴くので宝鐘マリンの商標登録を見ると、このようになっています。

特許庁の商標検索結果(宝鐘マリン)

同じく文字商標(名前)で権利化されています。
商標にはどの領域で商標を取りたいのか、「区分」という概念があります。
宝鐘マリンの検索結果の一番下を見ると分かるのですが、3つの区分が指定されています。
これが多いのか少ないのか、現時点では分からないと思います。

一方で、ANYCOLOR株式会社の商標を確認してみましょう。

特許庁の商標検索結果(ANYCOLOR社)

文字商標図形商標の両方が出願されているのが分かります。

特許庁の商標検索結果(ANYCOLOR社)

また、この図形商標の1部の詳細をみてみると、区分数の指定が17になっており、複数の領域をカバーするように商標出願がされています。

当然、商標の区分数が多いと商標出願・権利化・維持の費用は上がります。
しかし、昨今のVTuberのコラボ戦略からすると、色んな商品領域の事業とコラボするので広範囲に取るのは得策なのかもしれません。

前回の記事で、特許出願にも手を出すカバー社としては、商標はケチるのはどういう意図があるのかは気になるところです。
単に、昔は、現状ほどのビジネスを広がりを予測していなかったので、コアとなる配信事業系の区分だけで良いと判断したのかもしれません。

そうなると、知財担当者は、将来のビジネスの広がりも予期して、どういう区分で商標出願する必要があるのか、適切に判断する必要があります。

また、図形商標が、カバー社は少ないのも気になります。
ANYCOLOR社は、バランス良く文字と図形の商標の権利を獲得しているように見えました。

しかし、VTuber事業を考えると図形は諸刃の剣のような気もします。
なぜなら、VTuberの2D・3Dモデルは、適宜アップデートされデザインが変化していきます。
そうすると、取得した図形商標の権利では押さえられない可能性があります。
もちろん、アップデートしても、そういうデザイン的な特徴を大きく変更しないようにアップデートすれば問題ないかもしれませんが、そういう制限があること自体が、VTuberの可能性を制限する可能性があります。

ファンは一体何を識別してそのVTuberの配信やコラボ商品に辿り着くかといったら、ミニマムは「名前」なのかもしれません。
そう考えると、カバー社のような図形商標はとらず、名前だけを押さえる戦略は、コストパフォーマンスの高い良い戦略かもしれません。

しかし、それはコアなファンなだけであって、一般人は「キャラクタのデザイン」だけで、識別している(名前はしらない)可能性もあるので、やはり図形商標も欲しい気もします。
また、コラボ商品のグッズを出したとして、名前だけ入っていても、そんなにはそそられず、VTuberの「キャラ絵」が入って価値が生まれるのではないでしょうか。

やはり、ビジネスを考えて商標を出すことが大事だと言えます。

もし、この記事を見ている皆さんが、「個人」あるいは「事務所に所属」してVTuberをやるのであれば、この辺りのビジネスプランに応じて、自分で商標を取るのか、事務所に働きかける必要があります。

知的財産権は、ビジネスを有利に行う権利だということを念頭において、大事に検討して頂ければ幸いです。


                           執筆/得地


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