それでは今日も尾崎紅葉の『二人比丘尼色懺悔』を読んでいきたいと思います。
第二章の「戦場の巻」は、庵の主人である尼の夫である浦松小四郎のはなしのようです。
暁の空に、雪景色。小沢の近くに古い梅の木。低い梢に血が滴る生首が三つ結び付けられ、赤く染まる幹の二股に寄せかける若武者……。鎧の袖の板はちぎれ、草摺の板はほつれ、胴には血のまだら。額から眉を割って斜めをいく切り傷、赤をにじむ眼、うす青む面色。水際まで寄り、氷を破って、我が顔を水鏡に映して見詰め、顔の傷を洗い、辺りをまわして肩呼吸。半身を起き上げた、そのとき、右の太腿にヤリが!骨をも貫いたか!?
「吉則」は、三条吉則のことで、室町期の山城鍛冶を代表する刀工です。「蛭巻」とは、太刀や槍などの柄に、金属の細長い薄板を螺旋状に巻いてあるものです。「半首」とは、両頬から額にかけて、飛来した弓矢などから顔面を防護した面具のことです。
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!