それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。
江戸四里四方の老若男女、悪風来たりと驚き騒ぎ、家々ごとに狼狽えるのを、哀れとも見ぬ飛天夜叉王!人は我等を軽んじたり!我等を賤しみたり!我等を縛る機運の鉄鎖、我等を捕らえし慈忍の巖谷は、我が神力にてちぎり捨て崩れさしたり!暴れよ今こそ暴れよ!かれらの頭を地につかしめよ!かれらの喉に氷を与えて苦寒に恐れわななかしめよ!なぶらるるだけ彼等をなぶれ!急に屠るな!なぶり殺せ!活かしながら皮をはぎ取れ!肉をはぎ取れ!暴れよ進めよ!神とも戦え仏をも叩け!……ゆさゆさゆさと怪力で堅固なる家を動かし橋を揺るがします。
というところで、「その三十二」が終了します。
さっそく「その三十三」を読んでいきたいと思うのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!