それでは今日も尾崎紅葉の『三人妻』を読んでいきたいと思います。
轟が本家に近づくと、本家の方角目指して走る馬車や人力車の数が夥しく、もしやと胸がさわぎます。問うまでも無し……不幸のこと……ひょろひょろと玄関へ走り込めば、客は群がり、取次はうろたえ、受付は混雑……応接室の前まで入り込み、使用人たちを引き留め取次を頼みますが、みな血眼になって聞く耳を持ちません。日暮れに余五郎が息を引き取ったことだけはたしかに聞き、思っていたことながら今更ドッキリして夢見る心地です。躍り立つ胸を鎮め、二時間後、ようやく藤崎を呼び出して、お艶のことを手短に語ろうとしますが、語り終わる前に人に連れていかれ、その後、二度呼んでも出て来ません。
というところで、「後編その三十七」が終了します!
さっそく「後編その三十八」へと移りたいのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!