それでは今日も尾崎紅葉の『三人妻』を読んでいきたいと思います。
お艶はお麻のもとを訪れますが留守にしているということで、帰ってくるまで待つというと、使用人は「お帰りのほどは知れません」というので、すごすごと帰ります。紅梅の母親が大病だというので、母親が隠居している場所を訪ねようとしますが、結局わからず、こちらもすごすご帰ることに……。一日おいて、再び本家を行くが、今朝からお出掛けになり帰りはわからないと言われます。二日も留守であることを訝しく思い、余五郎が来た時に、様子を聞くと、どうやら留守というのは嘘らしい……。お艶はおのれの不調法をならべて、お麻への謝罪を頼みますが、余五郎は「それしきのこと心配すな、おれが良きように言っておくから、いつでも遊びに行け」。口では言うがいつもの無頓着、洒落ばかり言って取り合ってくれません。念を押して幾度も頼むと、余五郎は、おれが付いているからには、ぬかるみを蒸気船で渡る気で大丈夫と思え!と高笑いします。二日経って、今日こそは会う気で本家へ行くと、またもお麻は留守で、使用人もきまりが悪そうなかおつき。三度も足を運び、余五郎の言葉もあるのに、なお心が解けないことに、お艶もムッとしますが、みずから招きたること。たびたび上がりましてさぞかしご迷惑のことと言って会釈して帰ります。
都会の女社会で戦ってきた紅梅と、無垢な田舎娘のお艶の対比、ここらへんが『三人妻』のいちばん面白いところかもしれませんね!
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!