それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。
木を切る音、鉋で削る音、孔掘る音に釘打つ音の響き忙しく、木っ端は木の葉のように翻り、おが屑は晴天の雪のように舞う、にぎやかな感応寺境内。のみを砥ぐ爺や道具探しにまごつく童、しきりに木を挽く日雇い、そのなかに総棟梁ののっそり十兵衛。ここをどうして、そこにこれだけと、仕事の監督として指図命令。仕様を書いて示し、彫物の絵を描いてやっているところへ、いのししよりも速く飛び込んで来る清吉。忿怒の形相で目を一段見開き、「畜生、のっそり、くたばれ!」と研ぎ澄ました釿を打ちおろします。左の耳をそぎ落とされ、肩先を少し切り裂かれ、なお踏み込んで打って来るのを逃げ、身を翻したはずみで踏み抜く五寸釘。なおも釿を振りかぶる清吉に「馬鹿め」と叫ぶ男。丸太で脛をなぎ倒し、起きようとする清吉の襟元をとって、「やい俺だ!血迷うな!この馬鹿め!」とぬっと出す顔は、睨みと怒りの形相。
というところで、「その二十五」が終了します。
さっそく「その二十六」を読んでいきたいと思うのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!