それでは今日も尾崎紅葉の『二人比丘尼色懺悔』を読んでいきたいと思います。
谷陰にひっそりと佇む庵……茅葺は黒ずみ、壁は破れ、竹縁は踏み抜けそうです。ここには暦日がなく、昼は木を伐る音に暮れ、夜は猿の声に更けます。そんな庵に、ひとりの比丘尼が訪れます。どうやら、慣れぬ山道に迷ったようで、一晩泊めてほしい、とのこと。21歳の主人が見るところ、客人は、ねたましく思うほどの容色で、自分よりも2歳ほど若くみえます。客人が主人を見ると、世に捨てらるべき姿、世に飽くといふ年で、自分の成れの果てかと思います。主人も客人も互いに一様の思いはありますが、言い出す機会がありません。
「紙帳」とは、和紙で作った蚊帳のことです。眠れぬ比丘尼は行燈の明かりを頼りに、蚊帳として再利用された「かつての書き置き」を読みます。
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!