それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。
十兵衛の妻・お浪は、源太の提案を断った十兵衛に対して言います。「並のものには出来ない親切の相談を、『イヤでござりまする』とはあまりなる挨拶。ひとの情けをまるでわからぬ土人形でもこうは言うまい。親方様があれほどに、あなたこなたのためを図って、たいていではないお情けをかけてくだされ、仕事をわけてやろうと、身に染みるほどありがたいご親切のご相談、わざわざお出でなってのお話、それを無にして勿体ない。イヤでござりまするとは冥利の尽きたわがまま勝手、この私の今着ているのも、寒そうにしているのを気の毒がられたお吉様(源太の妻)が下されたのとは、そなたの眼には映らぬか。どこまでも弱い者をかばって下さる情け深い分別にも寄り縋らず、一概に『イヤじゃ』とは、たとえ心底からイヤにせよ、物覚えのある人間の口から出せた言葉でござりまするか」。さらに、お浪はつづけます……。
生雲塔は、感応寺の五重塔が完成したときにつける予定の名称でしょうね。
というところで、「その十四」が終了します。
さっそく「その十五」を読んでいきたいと思うのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!