それでは今日も尾崎紅葉の『多情多恨』を読んでいきたいと思います。
柳之助は葉山の妻であるお種が苦手ですが、勇気を出して盃を差し、酌をします。それを葉山がからかいます。やがて肴を取りに行くと言ってお種が起ったので、やれ嬉しやと「ぼくはどうも窮屈でいかん、ぼくは困る」と言います。「何が困るのだ」「細君がいちゃ困る」「なぜそんなにイヤなのだろう」「理由はないけれど僕の性質なのだから」「どうあってもイヤだというなら仕方がない」「イヤじゃない、決してイヤではない!窮屈でな」「その窮屈がわからないよ」「細君の前で今のことを言っちゃ困るよ」。お種が来ると柳之助は起ちあがります。お種が「どうなすったのです」と問うと、「からかったのよ」「なにをからかいなすって?」「お前が出ていると窮屈で困るというから」「私がいると窮屈ですって?じゃ下へ参りますから」「下へ行ったら鷲見を寄こしてくれ」
というところで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!