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#301 「ふたつの行方」の問題

今日も坪内逍遥の『当世書生気質』を読んでいきたいと思います。

『当世書生気質」』はいよいよ最終回に突入!任那くんからの手紙を読んでいる小町田くんのところに、倉瀬くんが登場!田の次のことで話があるから、応接所へ来いと呼びつけます。行ってみると、そこにいるのは守山くん。久々に会った三人は、服装に関する議論で、桐山くんにコテンパンにやられた須河くんのことで盛り上がります。そんな無駄話をさんざんしたあと、ようやく小町田くんが、「僕に用事でもある訳ですか」と聞きます。そして、守山くんは、衝撃的な内容を告白します。何と、自分の妹は、田の次だと言うのです!そして、そのきっかけは、やはり上野戦争だというのです。降りしきる雨と、猛火の勢いの中、顔鳥の兄貴・全次郎が、三芳さんの妾のお秀と、その子・お新を連れて、混乱に乗じて逃げようとしているところから始まります。お秀は駆け逃げてる最中に、前方に倒れ、その時、お新を投げ出してしまいます。必死に奪うが如く抱きかかえ、先を走る全次郎に追いつこうとした時、全次郎の額に弾丸があたり、全次郎は亡くなってしまいます。髪も服も乱れ、息も絶え絶えの状態で逃げ延びると、なんと抱えていた我が子がお新ではありません!どうやら、転んでお新を投げ出してしまった時に、別の子供を抱え上げてしまったようなのです。とにかく、いま、自分が抱えている子供は誰の子供なのか、それを確認しなければ、お新を探し出すことはできません!臍の緒の包みを開くと、守山亮右衛門の娘・そでと書かれてます。そこから、お秀の中の天使と悪魔がささやき始めます。そして、お新の腰についてる巾着を奪い取って、置き去りにします。その後、お秀は吉原の青楼に身を沈め、そこからは悲運の連続…結婚するも夫と死別、多くの職を経て、ついに顔鳥の新造となります。そして、顔鳥の来歴を聞き、顔鳥こそが自分の子供であることがわかり、互いに涙。ところが、お秀は、ここでよからぬことを考えます。顔鳥は自身が持っている短刀の家紋(守山家)の出であると勘違いしているわけですが、そのまま守山家の娘として通そうと提案するのです。この話をこっそり聞いていたのが源作さんで、どう考えても、お秀さんが間違えて拾った女の子は田の次で違いない!そこで、源作さんはお秀を強請り、計画に乗ろうとしますが、心を改め、田の次に真実を告げ、お秀の悪事はバレて、第18回の顛末となるわけです。と、守山くんは、ここまでの話を小町田くんに説明して、人力車は守山くんの事務所に到着します。小町田くんは、守山くんに問います…

小「さうして顔鳥とお秀とやらは、それからどうしました。」
友「その顔鳥といふ女は、全次の種だには違ひないが、いくらか三芳には関係があるし、殊[コト]にお常さんとは叔母姪[オバメイ]の中だし、まさかそのままで追放[オイハナ]す訳にもゆかず、三芳からは手切金[テギレキン]として若干[イクラカ]の散財。園田(お常の旦那)も幾分か遣[ヤ]つたとの事。イヤとにかくに小説めいた話さ。ハハハハハ。」
倉「しかし何にしろ目出[メデ]たい事件だ。目出たし目出たしといはざるを得ずだネ。」
小「ハハハ。さういふと、まるで赤本の結局のやうだ。」折から書生が襖をあけ、
書「先生。老君[ロウクン]がおかへりになりました。」
これより守山親子、小町田、倉瀬を伴ひ、何楼[ナニガシロウ]に登りて盛んなる賀宴を張り、三芳、園田を初めとして、お常、田の次などを招きつどへ、互に楽しげに酒酌[クミ]かはして、その日は夜深[ヨフク]るまでその楼にあり。小町田が席上祝辞、倉瀬が詼謔[カイギャク]の演説なんども、写しいだしなば興あるべけれど、丁数[チョウスウ]已に限[カギリ]あれば、作者は本意[ホイ]なくもこれを略[ハブ]きぬ。ああ十余年の星霜[トシツキ]を経て、親と子、兄と妹[イモト]、かくゆくなうめぐりあひぬ、その楽しさやいかなりけん。況[イワ]んやその再会の事の次第が、奇異[フシギ]にして更に奇異なるをや。

『当世書生気質』には、大きな話題が二つありました。ひとつは「守山くんの妹の行方」、そしてもうひとつは「小町田くんと田の次の恋路の行方」でした。

妹の件に関しては落着しましたが、恋路の行方はどうなったんでしょうね?w

ということで、このつづきは…

また明日、近代でお会いしましょう!

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