それでは今日も尾崎紅葉の『三人妻』を読んでいきたいと思います。
お仲は十九になっても奥手で、口数少なく温和な女性で、容易に事を洩らすことはないと思い、味方に引き入れようとお才は考えます。逃れぬ義理から余五郎の世話になっているが、菊住との縁を切れぬわけを、哀れに気の毒に話すが、お仲は毛筋ほども疑いません。私を主人と思い、大事と思うのなら、忘れても口外しないでほしい。そのかわり私も末永くお前の力となって世話しよう。お才の思惑通り、恩に絡まれ、欲にひかれるお仲。自分に悪い事をしようと言っているわけではない、何も知らぬ顔して口にさえ出さなければいい……お仲がおとなしく返事すると、お才は喜び、何も言わずに、縮緬に三円添えます。
というところで、「後編その十九」が終了します!
さっそく「後編その二十」へと移りたいのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!