#1522 つまりは我が口よりいでし過ち
それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。
「源太いるか?」と入って来る鋭次。お吉が立ち上がって、「おお親分様、ああこちらへ」と火鉢の前に案内します。お吉の顔を見て「顔色悪いがどうかしたのか。源太はどこへ行ったのか。もう聞いたであろうが清吉めがつまらぬことをしでかしての。それゆえちょっと話があってきたが、むむそうか、もう十兵衛のところへ行ったと……。ははは、さすが源太、すばやい。なあに、お吉、心配することはない。十兵衛と上人様に謝罪をして、幾重にも勘弁してくだされと三つ四つ頭を下げれば済んでしまうこと。聞いた話では十兵衛も耳たぶを切り取られても恨まれぬはず。清吉も俺に『十兵衛を殺したあとはどう始末をつける?』と言われ悟ったのか、『ああ悪かった、間違ったことをした、親方に頭を下げさせるようなことをした』と涙をボロボロこぼしている不憫さは、なんとかわいい奴ではないか。のうお吉、ここはお前の設け役、清吉をどうか……源太がいないと話もいらぬ。どれ帰ろうかい」。お吉は思えば済まぬことばかり。
「山繭縞」は山繭の糸を絹糸にまじえて織った縞模様の絹布のこと、「飛八丈」は「鳶八丈」のことで、鳶色と黄色または黒色の格子縞に織ったつむぎのこと、「毛万筋」は「万筋縞」のことで、非常に細かい縦縞のこと、「唐七糸帯」は舶来のしゅちんのことで、しゅちんとは、繻子の布地に種々の模様を浮き出させた織物のことです。
というところで、「その二十六」が終了します。
さっそく「その二十七」を読んでいきたいと思うのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?